世界で一番、不器用な君へ
「で、誘った?」
「…まだ」
部活帰り。もうすぐ7時なのに、まだ空は明るい。
セミの鳴き声が頭の中でぐるぐる回る。
「お前さ、やる気あんの?」
「あるよ!誘うってすごい勇気いるんだからね!?」
手に握られたソーダ味のアイスが暑さで溶けて手をつたう。
「明日、絶対誘えよ。分かったな?」
「…わかりました」
何様だよ、という言葉をなんとか飲み込んで私は答える。
「でも、うまく話せる自信ないし…かわいい服も持ってないんだけど…」
「そういうのは俺に任せとけ。お前は、余計なことは考えないで、キャプテンを口説け。いいな?」
「口説くって…バカ!サイテー!」
「なんだよ、事実だろ!?」
そう言いながら蓮は私の蹴りを見事にかわしてアイスをかじった。