世界で一番、不器用な君へ


「そう、ここ持って、肩の力抜いて」


教えるって…


後ろから!?


密着しすぎて、なにも頭に入ってこない…


「一花、緊張しすぎ」


耳元で先輩の声が聞こえる。


こんなの、緊張しないわけないよ…


「あの2段目のお菓子狙うよ」


「はっはい!」


先輩の肌の体温が、浴衣越しに伝わる。


幸せすぎるよ…


「あっ!取れましたよ先輩!」


「な、言ったろ?」


初めて当たった…嬉しい!


「じゃあ次は俺の番ね。なにが欲しい?」


「んー…あ、あのクマ!バスケ持ってますよ!かわいい〜」


「りょーかい、あれね」


真剣な表情で構える先輩。


バスケをしてる時もそうだけど、先輩のこの真剣な眼差しが、私は本当に好き。


「おっ、兄ちゃんすごいねぇ」


「すごーい先輩!」


「はい、プレゼント」


掌に乗せられた、クマのキーホルダー。


「…一生、大切にします」


「そんなに!?いつでも取ってあげるよ?」


それでも、一生。


この日のことは、忘れられない。

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