世界で一番、不器用な君へ
私とぶつかった、ユカさんは、綺麗な瞳に涙を浮かべていて。
ワンピースから覗く白くて華奢な腕が震えていた。
「あ…一花ちゃん…」
ハッとして顔を見上げると、大和先輩は驚いた表情でユカさんを見つめている。
ドクン、と心臓が嫌な音を立てる。
「や、まと…」
「ユカ、お前どうして…」
「ごっごめんね、2人の邪魔、しちゃって…なんでも、ないの、本当に…」
そう言って、ユカさんは走っていってしまう。
「ユカ!!!」
ビクッ、と肩が震える。
心配に決まってる。
だって、大和先輩は、ユカさんのこと…
「…大和先輩」
まだ、好きですよね?
「行ってください。ユカさんのところ」
「でも…」
「私も心配ですし…」
体が、震える。
私、ちゃんと普通に話せてる?
「…ごめん、一花。すぐ戻る」
スルリ、と簡単に、手はほどけた。
本当に、夢みたいに。
幻だったかのように、大和先輩は、いなくなった。