世界で一番、不器用な君へ


「マネージャー、全員揃ったか?」


「はい!全員います!」


私の声を合図に、バスが動き出す。


4泊5日の強化合宿が、今日から始まる。


これから始まる地獄を知らない1年も、現実逃避をする2年と3年も、無邪気に騒ぎあっている。


後ろの空いている席に座ろうと向かっている途中で、突然腕を掴まれる。


「一花、ここ座れ」


「ちょっ、私は後ろに…」


「雨宮ー危ないから座れ!」


コーチの声が飛んできて、仕方なく私は蓮の隣に腰をかける。


気まずい。何を話す?


何もなかったフリをする?


「昨日のさ…」


来た!やばい!


「お礼、だっけ?姉ちゃんに伝えといたから」


…ん?


あれ?


「あ、うん、ありがと」


肩の力が一気に抜ける。


そっか、そうだよね。


あれは多分何かの間違いで。


私の理解力がなかったから勘違いとかして。

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