世界で一番、不器用な君へ
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「じゃあ一旦休憩!15分後に再開します!」
私の声に、張り詰めていた空気が一気に緩む。
さすがに合宿のメニューはハードだ。
隣のコートでは恵里さんの学校のバスケ部が練習をしている。
他校がいるせいか、うちもいつもよりやる気がある気がして、こういうのも悪くないかな、なんて。
「はい、タオルとドリンクです」
「一花〜、お前もあれ見習えよ!」
3年の先輩の指先を追う。
そこには可愛い笑顔で部員たちに声をかけて回る恵里さんがいた。
「いやぁいいなー…なんつったって胸が…」
「わかりました、じゃあ先輩は私のドリンクじゃなくて外の蛇口で水でも飲んでてください」
「いやっ違う違う!ほんと、一花は最高のマネージャーだよ!うん!お前のドリンクは世界一だ!」
本当、調子いいんだから。
確かに私にはあんな女子力も、…胸も、無いけどさ。
でも、マネージャー力なら誰にも負けない。多分。
「おい蓮、お前はどう思う?」
「そうだな…」
いつになく真剣な顔をしている蓮と浩平。
蓮とは気まずいけど…でも、友達として、私はずっと蓮といたい。
前みたいに口きかなくなるなんて、絶対に嫌だ。