世界で一番、不器用な君へ
「じゃあ今日の練習は終わり!1時間後に食堂な、それまで自由時間!」
コーチの声に、部員は脱力したり喜んだり大忙しだ。
1年は半泣きだけど。
みんなが体育館を後にする中、私はボールの片づけと軽く掃除をするために残る。
「一花ちゃんっ」
「うわぁっ」
後ろから抱きつかれ、慌てて振り向くと、そこには恵理さんがいた。
…胸が、あたってるんですが。
「私、蓮くんのところに行きたくて…後のこと頼んじゃってもいい!?」
「ええっ」
この量を全部やるのはかなり辛いものがあるけど…
完全に恋する乙女の顔してるしなあ。
好きな人に近付きたい気持ちは、すごくわかるし。
「分かりました、頑張ってください」
「ありがとう!!!」
一花ちゃん大好き!と言って、そのまま恵里さんは行ってしまった。
さ、とりかかるとしますか。
ボールがたくさん入った籠を引いて、体育館の中央部分まで持ってくる。
「一花」
声に、心臓が跳ねる。
振り返らなくても、分かる。