世界で一番、不器用な君へ
「なるほど、つまり彼女と連絡を取るために携帯禁止と言われる中こっそり持ってきた携帯をコーチに見つかって没収され、彼女に連絡を取る手段を失った、と…」
「そうなんです!コイツ、彼女と付き合ったばかりで…」
「彼女との約束が…」
落ち込むアキの背中をとりあえず撫でる。
「マネージャーの方からなんとか説得してくれませんか!?」
ソウに迫られ、私はウーンと唸る。
コーチはそれはもう頭が硬い人で、大体合宿1日目なんてみんなの出来が悪くて機嫌が悪い。私が言っても聞いてくれるかどうか…
「いいですよ、一花先輩、そんなことしなくて。自業自得なんだから。フラれたらフラれたで、その程度の女だったってことっすよ」
「カイいいお前には人の心がないのかああ!」
「ちょっとソウも落ち着いて!」
私に怒鳴られてもへこたれることなんてなかったアキが、こんなに凹んでるなんて…
それに、きっとすごく彼女のことを大切に思ってるんだろうなあ。
胸が、ギュッと締め付けられる。
「よし、分かった。私が取り返してきてあげる」
「ほんとっすか…!?」
涙目のアキに親指を立てる。
「一花先輩、大丈夫っすか?」
不安そうなカイに微笑む。
「大丈夫だから、アンタたちは部屋に戻って」
私はそう言って、コーチの部屋に向かった。