世界で一番、不器用な君へ
大声が出そうになるのをなんとか堪えて、勢いよく振り返る。
「っ…蓮か…びっくりさせないでよ!!!」
「おまえ正気か?コーチに見つかったら殺されるぞ」
呆れ顔の蓮。
でも、息が少しだけ切れてる。
もしかして、カイたちに聞いて駆けつけてくれた?
「だって、アキすっごい落ち込んでたし…」
「ったく、ほら、急いで出るぞ」
蓮に促されて立ったそのとき。
「いやあ、すみませんねえ。うっかりしてて。念のため中も見ておきますわ」
「じゃあ先向かってるので」
聞こえてきたのは、コーチと顧問の声。
体が、一気に固まる。
動けない私を、蓮が思い切り引っ張った。