世界で一番、不器用な君へ


「蓮、もういいから」


グッと胸板を押し返しても、なかなか蓮は離れない。


「ねえっ…どいて!」


「…俺だけかよ」


腕がひかれ、そのまま蓮の胸元に押しつけられる。


「こんなにドキドキしてんの、俺だけ?」


驚いた。


手に伝わってくる蓮の鼓動が、想像以上に大きくて早かったから。


でも、それ以上に。



私の心臓が、同じくらいうるさかったから。



「やっ…」


「なあ、一花」


首筋に、グリグリと頭を押しつけられる。


「俺のことなんとも思ってないのに、なんでそんなに意識してんの?」


これ以上は、だめだ。


全力で蓮の体を押し返して押し入れから出る。


体の火照りが、おさまらない。


「一花、待って」


「離して!」


掴まれた腕を振る。


「そんな顔で戻れんの?」


やだ、やめてよ。


「知らないっ」


「そんな余裕ないみたいな顔、すんなよ。勘違いしそうになる」


蓮のことなんてなんとも思ってないのに。



なのに、どうして熱がひいてくれないの?



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