世界で一番、不器用な君へ
「分かるの、ずっと見てたから。…あーあ!こんなことわかりたくなかったな!!」
俺に向けてヘラっと笑う。こんなことへっちゃらだって、アピールするように。
「…お前のそういうとこ、ほんとムカつく」
「…え?」
「そんな痛々しい笑顔みせてくんな」
「…なによ」
俺の腕に、小さな拳が叩きつけられる。
「バカ!蓮のバカ!アンタになにが分かんの!?こっちだってアンタなんかに知られたくなかったっつーの!ゴリラ女が恋なんてしてすみませんねっ…でもっ…」
涙で声が揺れる。ヘニャヘニャの声で、一花は叫んだ。
「好きになっちゃったんだもんっ…大好きなんだもん!…ブランコなんか漕いでないでいい加減おりろばかあ!!!」
俺は何度も振り下ろされる一花の腕を掴み上げ、思い切りブランコからおりる。
「ちょっ離してよばか!変態!悪魔!性格クズ野郎!」
暴れる一花を強引に抱きしめる。
「はいはい、泣け泣け!辛かったな!」
「うううもっと優しくやんなさいよ!」
「あのなあ、女子は鼻水出しながら泣かねえんだよ」
大声を上げて、鼻水を俺の制服につけながら、一花は泣きじゃくった。
子供みたいに盛大に。
…こいつが泣くのを見たのは、多分初めてだった。