世界で一番、不器用な君へ


どれくらい経っただろう、泣き声が小さくなり、俺の腕の中で熱くなっていた体も落ち着いてきた。


「…ありがと、もう平気」


一花の声に、俺は素直に腕を離す。


目の前にいる彼女は、恥ずかしそうな、悔しそうなそんな顔をしていた。


「スッキリした?」


「…ん、悔しいけど」


一花はうつむいて、ボソリと呟く。


「ほんと、早く忘れなきゃ」


そのしおらしい顔が、なんだかムカついて。


「…お前、この俺が!胸貸してやったっていうのになんも分かってねーな」


「なっ…アンタはすぐそーやって調子のる!!」


生意気なことを口走る一花の頬を、俺は遠慮なく掴んだ。


「まずはこの減らず口をどうにかしような、一花ちゃん?」


「やめなひゃいほ!」


「…あれ、いいのかな?そんなこと言って」


俺の言葉に、一花の顔はサーっと青くなった。


「…まひゃは」


俺はニヤリと笑って頬を解放してやる。

< 28 / 190 >

この作品をシェア

pagetop