世界で一番、不器用な君へ
どれくらい経っただろう、泣き声が小さくなり、俺の腕の中で熱くなっていた体も落ち着いてきた。
「…ありがと、もう平気」
一花の声に、俺は素直に腕を離す。
目の前にいる彼女は、恥ずかしそうな、悔しそうなそんな顔をしていた。
「スッキリした?」
「…ん、悔しいけど」
一花はうつむいて、ボソリと呟く。
「ほんと、早く忘れなきゃ」
そのしおらしい顔が、なんだかムカついて。
「…お前、この俺が!胸貸してやったっていうのになんも分かってねーな」
「なっ…アンタはすぐそーやって調子のる!!」
生意気なことを口走る一花の頬を、俺は遠慮なく掴んだ。
「まずはこの減らず口をどうにかしような、一花ちゃん?」
「やめなひゃいほ!」
「…あれ、いいのかな?そんなこと言って」
俺の言葉に、一花の顔はサーっと青くなった。
「…まひゃは」
俺はニヤリと笑って頬を解放してやる。