世界で一番、不器用な君へ
本当にこいつは…バカなのか?
私の大声に驚く先輩を置いて、私は蓮の腕を思いっきり引っ張り体育館から出る。
「いい加減にして!」
「なにが?」
一点の曇りもない笑顔に、腹の底からイライラが湧いてくる。
「…人の気持ちで遊んで楽しい?」
所詮、わかんないよ、蓮には。
なんの欠点もなくて、モテモテで。
男子から女扱いされない、好きな人にも気づいてもらえない私の気持ちなんか。
「あー楽しい楽しい、お前のウジウジしてる態度みてるとな、腹が立つほど楽しいよ」
怒ってるのは私のはずなのに、なぜか蓮はイライラしてて。
「なんなの?今度は嫌味?なんで関係ないアンタにそんなこと言われなきゃなんないわけ?私は、別に先輩とどうこうなりたいとか思ってるわけじゃなくて今まで通りマネージャーとして側にいれたらそれで…」
「じゃあなんでそんな顔してんだよ」
唐突な真剣な声に、私は思わず言葉に詰まる。
「…別にいつもこういう顔ですけど」
「今にも泣きそうなくせに」
…うるさい。本当、うるさい。