世界で一番、不器用な君へ


なんだそれ、そう言って先輩は笑う。


よかった、いつもの先輩だ。


さっきはなんとなく、別人みたいだった。


あんな雰囲気初めてで、びっくりした。


「…この前、廊下で怒ってただろ?アキとソウが、もう絶対走りませんって涙目で言ってきた」


「あっあれは…!…聞かなかったことにしてください」


最悪、やっぱり聞かれてたんだ。


廊下で大声で怒鳴るなんて、どこまでもかわいくない…


「嬉しかった。聞いたんだろ?顧問に。バスケ部員は行儀悪いとかさ、なにかと文句つけられるんだよ他の部の先生とかにさ」


そのことでキャプテンが小言を言われてる。そう、顧問がこぼしているのを聞いた。


「お前の怒鳴り声が聞こえたとき、蓮もいてさ。言われたよ。一花は、バスケ部のために、キャプテンのために必死ですよって。…ほんとにありがとな、いつも」


そんなことを、蓮が…


知らなかった。蓮にバレてたことも、そんな風にフォローしていてくれたことも。


何にも、知らなかった。


「…っ先輩」


ちゃんと言うって決めた。もう引きずらない。ケジメ、つけるためにも。


蓮にも、支えられてばかりは嫌だ。アイツばかり大人は、嫌だ。


「大和先輩、私…」


ずっと、ずっと…

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