世界で一番、不器用な君へ


「蓮!」


幻聴かと思った。


…だって、いるはずない。


転がっていったはずのボールが、的確な位置に飛んでくる。


キャッチして、顔を上げた。


「…なんでいんだよ、お前」


「…っありがと!!!!私、やっぱり諦めたくない!ゴリラって言われても、残念って言われても、でもやっぱり女の子だもん!!!!」


…なんだそれ。


わざわざそんなこと言いに来た?汗だくになって走りながら?


「…ほんと、バカだな」


ボールが手を離れる。


綺麗な曲線を描いて、吸い寄せられるようにネットに収まる。


胸の中のモヤモヤは、どこかに行っていた。


ムカつく。俺が、お前なんかに振り回されるなんて。


でも…


「蓮、ナイッシュー!」


やっぱりそういう笑顔の方が、似合ってるんじゃない?

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