世界で一番、不器用な君へ


***


「はいあと10周!!」


「うそだろ!?」


「鬼!」


私の声にあちこちから不満の声が漏れたが、無視してホイッスルを吹く。


バスケ部恒例の、ギャラリー30周。


体力をつけるには、なんだかんだ走るしかないのだ。


走り終えてクタクタになったみんなのところに、タオルとドリンクを持って走る。


「うっわ、そんなもん持ってよく走れるな」


失礼なことを言う性格クズ野郎に蹴りを入れて、順番に配る。


「キャプテン、どーぞ」


「サンキュ」


どれだけ走ってもキャプテンは音をあげない。


爽やかスマイルもそのまま。


顔がにやけそうになるのを私は必死にこらえてること、きっとキャプテンは一生気づかない。

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