世界で一番、不器用な君へ
「うえって、お前朝からどんな声出してんだよ」
頭の上から、小馬鹿にしたような声が降ってくる。
聞き慣れた声。容赦なく頭にかけられた体重。
「っ…蓮!重い、邪魔!」
私は拳を握りしめて思いっきり真横にあったお腹にぶちこむ。
「ゲホッゲホ…ってめえ!ふざけんな!殺す気か!」
「そんくらいじゃ死にませんー」
「こんのゴリラ女!仮にもお前はマネージャーだろうがっ!選手に怪我させてどうすんだよっ」
「あんたみたいなクズ野郎がいるとチームの士気が下がるからちょうどいいわ」
お腹をさすりながら大げさに顔を歪めるこの男、西条蓮は、不本意なかがらクラスメイトで、本当に不本意だが、同じバスケ部に所属している。
楓曰く、学校で1、2を争うイケメンらしく、女子からの人気がすごいらしい。
たしかに今もクラス中の女子の視線が集まってるような…
ほんと、こんなやつのなにがいいんだか。