世界で一番、不器用な君へ
ばか、なんで先行くの!
教室に向かって走る途中、やっと廊下の奥に蓮の背中を見つけた。
足が、自然と加速する。
あと、ちょっと…
「うわっ」
素っ頓狂な声が、頭の上から聞こえた。
どうしたらいいかわからなくて、思わず突進してしまった。
「いってぇな!野生動物かお前は!」
振り向こうとする蓮の背中に、頭を押し付ける。
顔を見たら、多分恥ずかしくて思ってないことを言ってしまう。
「なんで先行っちゃうの」
「…あのな、俺はお前に気を遣って」
「頑張ろうね、二人三脚」
少しの沈黙の後に、大きな手が私の髪を思いっきりかき混ぜた。
「ちょっ」
「あたりまえだろ、ばーか」
ゴツゴツした手。先輩の手とは違う、落ち着くっていうよりも、なんだかくすぐったくなるような。
「もー!髪ぐしゃぐしゃになる!」
「誰もゴリラのことなんて気にしてねえから!」
「あん!?」
体育祭まで、あと1週間。