クールな彼とちょっとドジな彼女の恋の攻防戦(後日談移動しました)
シーンと静まった中で、私はどうすればいいか困惑し、とりあえず、名前を言おうと思い挨拶した。
「総務の桃寺 莉子です」
まだ名前しか言っていないのに、目の前の男は、笑い出す。
「桃…ももじ、り、っこ…ぷっ、ふっふふ、ふっふふふ」
彼一人、何かツボにハマって、大笑いしだし、失礼なと私は彼を睨んでいて、周りは、何がなんだか分からず、ボー然と彼を見ていた。
落ち着いてきた彼は、目尻の涙を指先で拭いながら悪い悪いと私を見て、また噴き出す。
「なんなんですか?」
「名前通りだと思って…ももじりこちゃん」
意地悪くニヤリとして、名前との区切りをつけずにそのまま続けて呼ばれ、そこで何の事かとやっとわかったのだった。
桃尻と桃寺、り…ね。
今朝見せたお尻の事を言っているのだと恥ずかしくなり、テーブルの下で彼の靴の爪先をハイヒールのかかとで踏んづけてやった。
顔をしかめた向井さんがこちらを睨むので、小さく舌をだし、べーとやり返す。
キョトンとした表情の後、彼はまた笑い出した。
珍しいものを見るかのように、男性陣が驚いている感じが伝わった。
「朝陽がこんなに笑う姿なんて、初めて見た」