クールな彼とちょっとドジな彼女の恋の攻防戦(後日談移動しました)
「ピーラーで削いだからですかね?」
彼はうわって顔をした。
「ちょっとジンジンするぐらいなので、薄皮2、3枚ってとこです」
「それでも痛いだろ。ケガしてまで俺の為に」
「私のついでに作ったお裾分けです。向井さんの為に作ったわけじゃないので、間違えないでください」
一瞬の間の後、彼は大笑いする。
「ほんと、お前って俺のツボを押すのうまいよな」
あーおかしいと、また笑っていた。
「それはどうも…楽しんで頂けたなら、そろそろこの重いビニール袋と鍋をいい加減持ってくれませんかね?」
「悪い悪い…」
そう言って、受け取ってくれた彼。
「味は保証しませんから…不味かったとか辛かったとか文句を言いにこないでくださいよ」
「帰るのか?」
「えっ?」
「一緒に食べよーぜ」
イヤイヤ…無理。
脇に鍋を抱えて、空いた手で後退りする私の手を掴んだ彼によって、彼の部屋に引き込まれてしまった。
そして玄関に入って私の最初の言葉が、「キッチンが広いなんて羨ましい」だった。
「ダイニングキッチンってヤツですか」
「あー、そうだな。6階から上は1DKだったはず。ここに住む時下の階の1Kも見てきたからな」
「うらやましい」
「風呂も広いぞ」
「えーずるい。見せてくださいよ」