クールな彼とちょっとドジな彼女の恋の攻防戦(後日談移動しました)
「もう、全部あげます」
「サンキュー」
そして、綺麗に食べてしまった彼が、『ごちそうさまでした』と手を合わせて満足顔で私を見る。
「また、作ってくれよ」
その笑顔に、胸の奥がキュンとしたのは…ときめいたからじゃないと思いたい。
私は、この胸のざわつきをごまかしたくて、お皿を回収して、キッチンへ行く。
鍋やタッパを洗うついでに、お皿とスプーンを洗っていく。
「ごちそうになったうえに、洗ってもらって悪いな…」
「いいえ、鍋持って帰りたいですし、大した量じゃないので」
ささっと片付けた私は、帰ろうとして玄関で立ち止まった。
「あっ、ビール、昨日の買い物代と重い荷物を持ってくれたお礼です。飲んでください」
「そんなのよかったのに…律儀だね」
くすりと笑う向井さんが、玄関に立つ。
「仮を作りたくないだけです」
彼の笑いのツボを押したらしく、あはははと笑った。
「ほんと、お前って面白いわ」
はあ?何を言ってるんだと顔に出ていたらしい私の頬を彼の手がスーとなぞっていき、背筋にゾワッと甘い疼きがおこった瞬間、肩をすくめてしまった事をごまかしたくて彼を睨んだ。
「けなしてます?」