クールな彼とちょっとドジな彼女の恋の攻防戦(後日談移動しました)
スマホを眺めながら、謝る勇気も出なくマンションの中に入ってすぐに、誰かにぶつかり、スマホが鈍い音をたてエントランスの床に落ちた。
あっ…
「すみません、大丈夫ですか?」
聞き覚えのある声に、画面の割れたスマホから顔を上げたら、向井さんだった。
「どうした?痛かったか?泣きそうな顔して、…」
初めて聞く彼の優しい声に、涙が溢れていく。
うっ、うわん、うわんと子供みたいに泣く私を戸惑いながらも胸を貸してくれる彼の温もりに、ほだされて彼の胸に、しがみついていた。
私の背をなだめるように、ぽんぽんと優しく叩く手が、更に私の涙を増やし、彼の着ているベージュ色のニットに涙で染みを作っていくのに、彼は何も言わず泣き止むのを待ってくれる。
しばらくして、少し落ち着いた私を抱きしめる手は私から離れて、落ちたスマホを拾っていた。
「画面にヒビが入ってる…俺がぶつかったせいで、悪かったな。新しいのと交換してもらいに行くか?ぶつかった俺の責任だし、金なら心配しなくていいぞ」
「…大丈夫です。多分ガラスフィルムが割れただけだと思うから、気にしないでください。それより、向井さんのニット、化粧で汚れてる。ごめんなさい…出かける予定だったんですよね?」