クールな彼とちょっとドジな彼女の恋の攻防戦(後日談移動しました)
「やっとなんとかな…」
「オープン2週間前になって、雰囲気に合わないから全部変えろってないよな…」
ぼやく梶岡さんに苦笑した向井さんと、目が合うと、彼に冷めた口調で言われ、なぜかチクッと胸が痛んだ。
「桃寺、総務の誰かがお前を探してたぞ」
「えっ、なんだろ?教えてくださってありがとうございます。梶岡さん、よそ見しててすみませんでした」
「全然大丈夫…莉子ちゃん、またね」
きっと、何を言ってもこの人は女の子を名前呼びするんだと諦め、なるべく関わらないでいようと心に誓う。2人に失礼しますと頭をさげて総務に戻ったら、誰も探していないという。
あれ?
向井さんの聞き間違いだろうと、その時は、特に深く考えなかった。
そして、家に帰ってから、ソファでくつろいていると、向井さんのニットを入れた紙袋が目に入り、あっ、と思ってしまった。
いつ、向井さんに会えるかと悩んでいたのに、いざ会ったらすっかりと用事が抜け落ちてて、嫌になる。
どうしよう?
時刻を見たら、夜の9時過ぎで、私的に訪ねてもギリギリ許される時間なのだが、昼間の向井さんの態度に、チクチクと胸が痛み出していく。だけど、何か立て込んでる案件が落ち着いた感じだったことを思い出し、もしかしたらと、彼の部屋を訪ねてみる事にした。