クールな彼とちょっとドジな彼女の恋の攻防戦(後日談移動しました)
ホッケの塩焼き、エイヒレ、タコわさ、タコの足の唐揚げ、塩辛、ししゃも、と、とりあえず目についたメニューと、お代わりのビールを店員さんに頼んだ。
「…ほんとにつまみばかり頼むなんてな」
「すみませんね。卵焼きとかエビマヨとかサラダとか女性が頼みそうなものじゃなくて…今度、飲みたくなったら他の人を誘ってください」
「お前じゃなきゃ、誘わねーよ」
予想もしていない彼の言葉に、自分の耳を疑ってしまう。
「あの…なんて言いました?」
「…なんでもねーよ」
不機嫌に、プイッと顔を逸らした彼は、手に持っていたビールを飲むだけで、しばらく2人の間に沈黙が続いた。
そして、次々と頼んだ品がテーブルの上に並んでいくのに、機嫌の悪い向井さんは、見向きもしない。
「ほら、飲みにきたんでしょ?じゃんじゃん飲んでください」
「ハァ‥お前といると、自信を失うよ」
「よくわからないんですけど…タコわさあげますから、元気出してください」
「…塩辛がいい」
「あっ」
呆れた表情の後、諦めたように私の大好きな塩辛を奪っていったのだった。
そして、なんだかんだと雑談しながら、彼は結構な量を飲んだと思うのに、平気そうに歩いている。