クールな彼とちょっとドジな彼女の恋の攻防戦(後日談移動しました)
「あー飲んだ、飲んだ」
「お酒強いんですね。私、あまり飲めないから、飲んでも変わらない人って羨ましいです」
「お前、ビール二杯しか飲んでないのに顔が赤いものな」
「言わないでください。だから、あまり飲めないんです」
「ゆでだこ」
「うるさいです。一杯が限界なのに、向井さんといると…」
「なんだよ?」
私は、今、何を言おうとしたのだろう?
「なんでもないです」
マンションも、もうすぐそこと言う時、隣で並んで歩いていた人が、急に立ち止まって私の腕を掴んだ。
「何か言いかけただろ?途中で止められると気になるから言えよ。俺といるとなんなんだ?」
こちらも、口に出そうとした言葉に戸惑っていると言うのに、彼は聞き逃してくれないらしい。
「えっとですね…忘れました」
「はぁっ?ここは、向井さんといるとドキドキしますとか言う場面だろ…」
しばらくの沈黙の後、私は、大笑いした。
「くっ、あはは、あは…あーお腹痛い。じ、自分で言います?そんな雰囲気ありました?もう、お腹よじれる」
あはははと、まだ笑いが止まらない私の腕を引っ張った向井さんの腕の中にとらわれた。
急な事に、笑いも止まる。
「あの、向井、さん?」