クールな彼とちょっとドジな彼女の恋の攻防戦(後日談移動しました)
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どうして、キスしてきたの?
向井さんの冷たい唇の感触が、いつまで経っても生々しく残っている。
そして、手には彼の頬を叩いた感触がいまだに残っている気がする。
考えても考えても、揶揄われたとしか思えなくて…
それが悲しくて…
モヤモヤとしたものが消えなくて…
忘れたくても忘れられなくて…
数日経っても、あの日のキスは、私を悩ませている。
しばらく彼に会うこともなく、平穏な日々を過ごしているのに、営業部の前を通る度に、無意識に彼を探してしまう。
その度に、彼を見つけてどうしたいの?と自問するのだが、揶揄われた文句を言ってやるんだと…言い訳をしては、心がチクリとして痛い。
蒸し返しても、きっと、彼にとってあの日のキスに意味なんてないというのに…
思い出しては、モヤモヤとしたものが溜まっていくばかりで、この訳のわからない感情を持て余す日々が続いていた。
数日ぶりに、社員食堂で絵梨花と楽しいランチを一緒に過ごしていたら、こちらに向かって笑みを浮かべて手を軽くふる人の横で、無表情のままこちらを見ている人に、胸が騒ついた。
「莉子ちゃん」
「なんですか?梶岡さん」
「見つけたから呼んだだけ…」