クールな彼とちょっとドジな彼女の恋の攻防戦(後日談移動しました)
「なにするんですか?」
目の前の男、向井さんを睨んだ。
「なにって、お前に聞きたいことがあるんだよ」
「えっ?な、なんで近寄ってくるんですか?」
一歩一歩、ゆっくりと距離をつめてくる彼と、背後にパイプ椅子や折り畳みの長机が山積みされ、あまり奥行きのない逃げ道を気にしつつ後退する私。
ガチャンとパイプが音を立てた時、私は、なぜかそこに用意されてたかのようなパイプ椅子に座ってしまった。
それと同時に、上からパイプ椅子の背に両手をつき囲うように腰を屈める向井さんの顔が、すぐそこにあり、避けようがない。
「…近いです。……近いって……ねぇ、聞こえてるでしょ、離れてよ」
両手で、彼の肩を押したり叩いたりするがびくともしないし、敬語も忘れて素の自分の姿で慌てふためく私の反応に、無表情というか不機嫌だった顔が、なぜか楽しそうに笑ってるのだ。
「また、キスされるかもって思ってるのか?」
図星を突かれ、ビクッと肩が揺れた。
「ま、ま、まさか…話を聞くだけなら、こんなに近寄る必要ないでしょ」
「へー…」
彼が目尻をひくつかせたまま笑う姿に、私は背筋に冷たい汗をかいていたまま、必死の抵抗で背を逸らすが、パイプ椅子の背もたれが邪魔をする。