クールな彼とちょっとドジな彼女の恋の攻防戦(後日談移動しました)
「…あーもう、話聞くから手を離して」
「また、この間のように頬を叩かれたら昼からの営業に行けないからな…拘束させてもらう」
思い出したくないのに、思い出させられて頬が熱くなり、誤魔化す為にまたニヤリと笑う彼を睨むことしかできないのが悔しかった。
「あれは、向井さんが無理やりに…あー、もう、聞きたいことって?」
「梶岡とは、どんな関係なんだ?」
「どんな関係って、少しの顔見知り程度。顔を合わせても挨拶するぐらいよ」
「あいつに名前呼ばせてもいいのかよ」
ムスッとした不機嫌な顔で言われ、心底腹が立ってくる。
「さっきの私と梶岡さんの話をちゃんと聞いてました?私、名前を呼ばれる仲じゃないですし、周りに誤解を招く行動はやめてほしいって言ってましたよね」
「……だ、だったら、もっとはっきり断れ」
思い出そうとして彼は視線の先を上に向けた後、気まずそうに視線を逸らしていた。
「何度も断ってます。それなのに…名前呼びやめてくれなくて、聞き流してたら、今日、食堂で…あんな事…あー、もう、私、梶岡ファンに抹殺されますかね?」
「抹殺って…大袈裟」
プッと吹き出した彼だったが、私の必死な表情に笑うのをやめた。