クールな彼とちょっとドジな彼女の恋の攻防戦(後日談移動しました)
しばらく考えた様子の彼はニヤリと笑った。
「わかった。内緒にしておいてやるよ。そのかわり…」
「そのかわり…なんです?」
「俺が連絡したら、いつでもすぐに来い」
「そんなことでいいんですか?」
「連絡先教えろ」
こちらの質問を遮る勢いで、スマホをポケットから出されて連絡先を交換したが、体勢は現状を維持したままだった。
「あの…そろそろ、どいてくれませんかね」
「……どうしようかな?」
「どうしようかなじゃなくて、時計見てください…もうすぐお昼終わっちゃうんですよ」
再び、彼の肩や胸を押しても退いてくれる気配はない。
「向井さん?」
「朝陽」
「はい?」
「朝陽って呼べ」
「な、なんで急にそうなるんです?私達、名前呼びするような仲じゃないですよ」
「いいから呼べって」
「呼んだら、退いてくれるんですよね?」
「あぁ」
あー、なんでよ。
彼の行動がわからないが、今は1秒でも早く退いてもらわないと、間に合わなくて仕方なく腹を括った。
「…あ、さひ、さん」
呼び捨てするほどの勇気はなく、申し訳程度にさん付けをつけたのだが、彼はなぜか頬を緩ませている。
「2人きりの時は名前で呼べよ。いいな」