クールな彼とちょっとドジな彼女の恋の攻防戦(後日談移動しました)

「今回きりじゃないんですか。いやですよ」

はぁっ?と、不機嫌顔になり顔を近寄せてくる。

「呼べないなら、今、ここで名前呼びできるまで躾けるしかないけど、いいのか?」

ハンと鼻先で笑わられる。

躾けるって…何?
ゾワッと身震いしかしない。

「え、遠慮します」

「なら、2人きりの時は…あ、さ、ひだ。さんはつけなくていいからな」

ほら、もう一度言えとスラックスのポケットに両手を入れて偉そうに顎先で指図され、渋々呼ぶ。

「あ、さ、ひ」

間を開けたのは私の微かな抵抗だった。

だが、それがいけなかった。

「生意気」

近い顔がグイッと更に近寄り、唇がそこまで…

うわ…わわわわわ
キスされる…

上からの押さえのない体で、避けようとパイプ椅子の背に体重を乗せたらどうなるのかなんて考えもせずに背を倒すと、ぐらっと後ろに揺れ、スローモーションのように後ろに倒れていく。思わず私が伸ばした手が掴んだものは、慌てて私を助けようとする向井さんのネクタイ。

そして…

体を床にぶつけた痛みの後、唇に触れだな温かな感触に目を見開き固まっていた。

「積極的だな…」

笑みを浮かべ揶揄う彼、否定しようとした私、なぜだか彼にキスで塞がれていた。
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