クールな彼とちょっとドジな彼女の恋の攻防戦(後日談移動しました)

一度上がった事のあるキッチンで、私は、彼から鍋を取り上げて温め直し始めると、気まずそうな彼は、冷蔵庫を開けている。その隙に彼の家の鍋の蓋をそっと開けたが、中身は空っぽで、クスリと笑い口元を掌で隠した。

「なんだよ」

「いーえ‥バケットも持ってきたんですが、ご飯がいいなら、家の冷凍庫に小分けしてあるご飯があるなーって思ったので…」

「バケットでいい」

「そうですか…じゃあ、シチューを盛りますから、座って待っててください」

「あぁ」

彼は冷えたビールをプシュと開け喉を潤すようにゴクゴクと勢いよく飲みながら席に座る。その様子に、私の心はなぜかほっこりとして、口元が緩み微笑んでいた。

食事中、彼が時たまこちらに目を向け、そして目をそらしながら食べてる様子を怪訝に思いながらも、彼がくれた度数の低い柑橘系の甘いチューハイをチビチビと飲む静かな空間も、前なら、耐えられなかったはずなのに、心は穏やかでいられる。

明らかに女性が好みそうなチューハイなんて、彼が飲むとは思えず、誰の為に用意したのだろうか?と考えてしまう。

あまりお酒の飲めない私の為にだったら嬉しいなぁ…
と、思った瞬間、頭の中から打ち消した。
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