クールな彼とちょっとドジな彼女の恋の攻防戦(後日談移動しました)
「ねぇ、莉子ちゃんの彼氏ってさ、誰?」
突然のことに、私の愛想笑いは驚き顔に変わる。
それを見た梶岡さんのニヤっと笑った顔に、背筋に寒気がおこった。
「俺のよく知ってる奴だよね」
断言する口ぶりで誰の事を言っているのか知らないが、私には、彼なんていないし、梶岡さんの誤解なのだ。だが、気安く名前呼びする彼に苦手意識と、前回、告白まがいな宣言をされた事もあり、ここは彼の勘違いのまま濁そうと判断した。
「さぁ?」
「…さぁって…惚けるんだ⁈」
梶岡さんの見下ろしながら『こっちは、わかってるんだぞ』というような顔に、彼が誰を私の彼氏だと勘ぐっているのかが怖くなる。
「惚けてないですよ。プライベートなことですし、誰構わず言うようなことでもないので、そっとしておいてほしいだけです」
「そう言われてもね…おれ、莉子ちゃんのこと気にいってるんだよ。おれに乗り換えなよ」
「…」
会話が噛み合わないことにあ然として、クラッと立ちくらみさえしてくる。
「もう、私に構わないでください。迷惑です」
「その、つれない態度…俄然振り向かせたくなるんだって、わからない⁈」
私の髪に許可なく触る手に嫌悪したまま、心で会話の通じない相手に悪態がポロポロ出ていた。