クールな彼とちょっとドジな彼女の恋の攻防戦(後日談移動しました)

ドアホン越しで『なんですか?』と不機嫌丸出しで応答すると、『さっさと開けろ』とドアを叩く相手を無視できず、仕方なくドアを少し開けたら、勢いよく彼の手がドアを開け体ごと中に入ってきて、玄関先で私を睨んでいる。

「私、部屋教えましたっけ?」

「前に、内覧したって話しただろ」

あー、そんな話したかも…

「そんな事、どうでもいい。夜、俺んとこ来いって言ったよな」

悩ませていた頭の中は、すっかり、忘れていた。

「…あー、すみません。忘れてました」

素直に謝ったのに、彼は私の態度がお気にめさなかったようで、拳で壁を『ドン』と叩いた。

ビクッと体が跳ねた私を、壁に両手をついて囲う向井さんの顔が、苛立ちを隠さず睨んでいた。

「梶岡と…」

壁ドン状態の今、困惑する私の心臓は、どんどん速くなっていくばかりで動揺しているのに、何か言葉を探すように視線を逸らした向井さんは、小さなため息をついて、私の肩に頭を乗せてきたのだ。

この状況…に、ドキドキが止まらず、瞼を瞬かせ困惑している私。

「…お前が、あいつを選ぶなら…それでもいいって…思っているのに、二人が仲良く一緒いる姿が頭からはなれない。モヤモヤして胸が苦しいんだ」
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