主の仰せのままに
私は車で、尊人様のお屋敷へ向かっていた。
だがなんだこの山道は。
途中から舗装されていない道が続く。
そして山の入口まで送り届けた車は、
私を置いてそそくさと帰って行った。
ここからは一人で登っていけと言うことか。
木が生い茂って朝なのに薄暗い。
でも懐中電灯はある。
よし行こう。
私は道(別名獣道)を進んで行った。
歩いていて気づいたが所々に目印があり、
迷わないようになっている。
そして田舎生まれの私には山登りなど造作もなかった。
一時間くらい歩いた頃淡い光が見えた。
尊人様のお屋敷だ。
たどり着いた、
ここがこれからお仕えするお屋敷。
私はそのお屋敷の大きさに驚いた。
財閥だからできることなのだろうか。
こんな山の上にこんな大きな建物があることがまず素直に凄い。
凄いと思ったのは束の間門や塀の汚れに注目した。
あぁ…
傍仕えは短い期間で変えていたと言っていたな。
私は掃除する所を見定めながら門を叩いた。
少し経ってから門がゆっくりと開いた。
開けた方、尊人様と目が合う。
「本家から参りました。敬です。」
お辞儀をしながら言う。
「予定丁度だな。
入れ。」
尊人様はそう言うとお屋敷の中に入っていく。
私もそれに習って歩く。
私は平静を保っていただろうか、
声は裏返っていたりはしなかっただろうか、
変に思われていないだろうか、
私はそんな事を気にした。
私は尊人様と目が会った瞬間に、
『この方にずっと仕えたい。』
そう思った。
尊人様は、
髭を生やしていたり、
ネガネをかけていたりしていましたが、
顔が整っていていわゆるイケメンでした。
でもそれじゃない、
私が尊人様に仕えたいと思った理由。