ねぇ、泣かないで？ずっと側にいるから。

第1章

新居

私、星野林檎！長く苦しい受験勉強をどうにか乗り越え、兵庫の大学への進学をきめたんだ。

「はぁ、やっと着いたぁ…」

大きなあくびをしながら、意外にも新しい外観のアパートに少し安心しちゃった。だって、古いアパートとか、オバケがでそう！！私、オバケとか苦手なんだよね…

「よいしょ、んっ、しょ！！」

重たい荷物を部屋に運びながら、ふと、愛しい飼い猫のことを思い出す。

「あ、ゴンタ出してあげるの忘れてたぁぁあ！！！」

一人で叫びながらゴンタの元へ向かう私は、端から見ればかなり変な人だったんだろうな…

まあ、そんなことはおいといて！ゴンタが入っているケージを開けてあげると、うらめしそうにこちらを見つめるゴンタと目が合う。

「ご、ごめんってば！！ちょっと忘れてただけなの！！！」

言い訳をする私に、猫のくせに冷たい眼差しを向けてくる。

ニャー、と訝しげに私を見つめたあと、ゴンタは新居を探検しはじめた。