嘘つきは眼鏡のはじまり
声をかけて星名さんだった場合、間違いなく恥を掻く。

でも、声をかけずに帰って星名さんとは別人だったら?

その場合は柊さんと今後、気まずくなる。

短い間にそれだけの考えを巡らした結果。

「……柊さん、ですか?」

「木の花(このはな)さん、ですか?……初めまして、柊です」

柊さんは一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐににこやかに挨拶してきた。

初めましてってことはやっぱり別人?
からかってこないし。

「あの、どうかしましたか?」

戸惑っている私に、不思議そうに柊さんの首が傾く。

「あ、その、柊さんが同僚にそっくりで」

「もしかして星名聖夜の会社の方、ですか?
聖夜は僕の、双子の弟です」

「ああ、それで……」
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