気づいたらコイツ拾ってました!?
ふと目が覚めると、私は病院の
ベットに居た。

腕には点滴が打たれていて
体はアザだらけだった。

そして、昨日の事を思い出した。

1つ目は、ハヤトを探して街に出たけど
見つからなかった事。

2つ目は、男の人に声をかけられた事。

でも、その男の人が誰だったのか
全く覚えていない。

ーガチャー

カーテンの開く音。

「渡辺さーん、気分どうですかー?」

ベテランっぽい看護師さんが尋ねてくる

「あ、はい。
悪くは無いですけど、昨日の事が
全く思い出せなくて…」

「あぁ…。」

看護師さんの顔が曇った。

「あの…何があったのか
教えて頂けないでしょうか?
このアザも見覚えがないし、病院に連絡してくださった方にもお礼がしたいんです。」

真剣な顔で訴えた。

「では…先生を連れて参ります…。」

そう言って、看護師さんは険しい表情で
部屋を後にした。

それから10分後、担当医師の前原と言う先生が私の元にやって来た。

先生が口にしたの耳を疑うような
事ばかりだった。

昨日、私は、倒れているところを
男性二人に発見され、そのまま
襲われそうになったらしい。

そう、俗に言うレイプだ。

私は必死に抵抗したらしいが、
男たちの暴力に耐えきれず
また気を失ってしまったらしい。

その時にできたのが、このアザだ。

服は破け、全身血だらけだったそうだ。

幸いなことに、顔には傷はなかったものの、頬の当たりが少し腫れている。

「本当は、口止めされていたのですが…。やはり、患者様がどうしてもと言うなら言わなければならないのが義務でして…ご気分を害されましたでしょう…。
申し訳ありません。」

前原さんは深々と頭を下げ
私に謝罪した。

私は恐怖で震えが止まらなかったと
同時に、昨夜の事を思い出した。

でも、1つ気になる節が。

「あの…その…口止めされていたと先程おっしゃいましたが、誰にですか?」

「運んできてくださった方にです。
真実を言ったら、彼女は必ず傷つく。
傷つくくらいなら一生知らない方がいいと…。」

その時、2つ目の記憶がよぎった。

まさか……。

「あのっ!その人はどんな顔で
どんな格好でしたか!?」

ハヤト…ハヤトであって!

「それが…顔が全くわからなくて…」

「えっ…?どういう事ですか?」

「いや…マスクに、深く帽子を被っていたもので…顔はハッキリとは…。
申し訳ございません…。」

「じゃ、じゃあ、
来ていた服は!?」

微かな期待を込めて聞いてみた。

「服ですか…。確か、黒いコートに
黒いズボン、中は白いシャツで何かのロゴが入っていました。」

やっぱりだ。ハヤトに間違いない…。

ハヤト…ハヤト…。

ハヤトが助けてくれたんだ…。
ありがとう…ハヤト…。

私は涙が止まらなくなった。

「大丈夫ですか?…。」

看護師さんがティッシュを渡してくれた。

それから2人は病室を後にし、部屋には
私一人になった。

呆然と空を見つめ、体の痛みに耐えながら何とか生きている。

それでも、心の中で思う事は
ハヤトの事だけ。

ハヤト…逢いたい……。

ーガシャー

すると、いきなりカーテンが開いた。

見るとそこには、ハヤトの姿があった。

「ハ…ヤト…?」

ずっと堪えてた涙が一気に
溢れてきた。

「ハヤト…。逢いたかった…。」

そんな私を、ハヤトは何も言わず
強く抱きしめてくれた。

その時だけは、体の痛みなんて
感じなかった。

「ハヤト……!ハヤト……!」

私は子供のように泣きじゃくった。

ハヤトは何も言わず抱きしめてくれていた。

「ハヤト…あの時私を救ってくれて
ありがとう…。」

「いや、全てはあの時の俺が悪い…。」

「ハヤトは何も悪くない!」

泣いても泣いても涙が止まらない。

「いや…あの時俺がちゃんとしてれば…
出てかなければこんな事には
なってなかった…。全部俺が悪い。」

「そんなことない!」

「そんなことあんだよっ!」

ハヤトは歯を食いしばって自分を
叱るかのように言った。

「ハヤト…?」

「…ごめん…。」

ハヤトの悲しそうな顔。

思わず私はハヤトの頬に手を当てた。

「そんな顔しないで、笑って?」

笑顔でハヤトにそう言った。

すると、ハヤトは【すぐ戻ってくる】と言い、病室を後にした。
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