Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
「眠いのか?着いたら起こすから、寝てるといい。」
馬車に揺られて、薄暗くなってきた頃、私の眠気はピークに達していた。
「ううん、大丈夫よ。ありがとう。」
ここで寝るのは失礼過ぎるから、絶対にダメ。
「それじゃあ、着く前にこれをあげるよ。」
そう言っておみやげだと言っていた袋の中から、かわいくラッピングされた小さな袋を取り出した。
それを不思議そうな顔のままの私の手に乗せてくれる。
「なに?開けていいの?」
「もちろん、開けてくれ。」
そうっと袋の口を開くと、小さなシーグラスを繋げたヘアアクセが滑り出てきた。
「すごいわ、これ!きらきらね。
シーグラスのヘアアクセね?
どの角度から見てもきれいだわ。
でも、どうして?」
こんなにもらってばっかりなのはおかしい。
私はお返しを持っていないし。
「プレゼントに理由はいらないだろう?」
当然だと言わんばかりに首をかしげるフォルティス。
「やっぱりもらえないわ。
私、もらってばっかりだもの。
ものが欲しくて来たわけじゃないし。」
フォルティスの真意が分からないから、突き放してしまう。
「あげたかったのもあるが、今日のことを覚えていて欲しいからだと言ったら?」
一層真面目な顔をしている。
「そんな、もらわなくても忘れないわ。」
「いや。
記憶だけならすぐに消えるが、ものは捨てるまで残る。
しかもリリなら捨てにくくて捨てないだろう?
もらってくれないか?今日が楽しかったのなら。」
こちらの様子を伺うように、犬のような顔をしている。
そんな言い方されるのはずるい。
「うん、楽しかったわ。ありがとう。
こんなにきれいなの、もらっちゃってどうしよう。
お返し準備してなくてごめんなさい。」
「そんな、いらないよ。
あのな、リリ。
好きだって気持ちは交換じゃないんだよ。
何かしてあげたいって気持ちは無償なんだ。
お礼を期待するのは愛情じゃなくて押し付けだよ。
俺は押し付けたいんじゃない。」
私の目を見て、ゆっくり言葉を選んで伝えてくれる。
フォルティスは高価なお礼を期待している他の人とは違うのかしら。
他の人からの好意とは何か違う気はする。
お父様もお母さんも私を愛してくれていたように、この人も愛してくれるの?
この人だけは信じられるかもしれない。
それに自分から信じないと信頼は築けないものね。
「私ね、あなたが他の爵位目当ての人と絶対に違うって信じられる気がするわ。」
「そうか。
もし、疑わしいと思ったら遠慮なく聞いてくれ。
リリを傷つける嘘はつかないから。」
そっと私の手を握って誓うように、呟く。
「うん。ありがとう。
今日はね、本当に楽しかったの。
素直にお礼が言えなくてごめんなさい。」
これは本心。
こんなに気があうとは思わなかったの。
あのあと、フォルティスは安心して、ぐっすり眠ってしまった私を起こすのが忍びないと言って、私を客間まで運んでくれたらしい。
目が覚めたとき、自分が屋敷のソファーに横になっていてびっくりした。
お父様はフォルティスに、お礼を言っていたとマリンが教えてくれたから、帰って来るのが遅くなったことで怒られてはいないはず。
マリンはすごく興奮していて、大変だったわ。
「フォルティス様がリリアンヌ様を抱いてお運びになっていたのは1枚の絵画のようでした!」
とか、
「リリアンヌ様をソファーに寝かせたあと、すごく愛しそうに頭を撫でておられましたよ!」
とか、
「たくさん動いて疲れただろうから、起こさなくていいと気づかっていらっしゃいました!」
とか。
マリンの方が私よりも真っ赤になっていて、何度もお似合いです!と言ってくれた。
私は人にそこまで優しくしてもらうのは、初めてなのでなんだかくすぐったい気持ちがした。
そして、後日、マリンの提案で、お出かけのお礼と寝落ちしてしまったおわびにお茶をしたの。
何度も美味しいと繰り返すフォルティスに、笑いが止まらなくなって、謝っても、拗ねてしまって大変だったり。
どんどん違う表情を見せてくれるのが嬉しい。
会ったばかりなのに、すっかり心を許してしまっているのは、今までの経験上、危険なことだと分かっているのに。
フォルティスだけは違うと思っているのかしら。
馬車に揺られて、薄暗くなってきた頃、私の眠気はピークに達していた。
「ううん、大丈夫よ。ありがとう。」
ここで寝るのは失礼過ぎるから、絶対にダメ。
「それじゃあ、着く前にこれをあげるよ。」
そう言っておみやげだと言っていた袋の中から、かわいくラッピングされた小さな袋を取り出した。
それを不思議そうな顔のままの私の手に乗せてくれる。
「なに?開けていいの?」
「もちろん、開けてくれ。」
そうっと袋の口を開くと、小さなシーグラスを繋げたヘアアクセが滑り出てきた。
「すごいわ、これ!きらきらね。
シーグラスのヘアアクセね?
どの角度から見てもきれいだわ。
でも、どうして?」
こんなにもらってばっかりなのはおかしい。
私はお返しを持っていないし。
「プレゼントに理由はいらないだろう?」
当然だと言わんばかりに首をかしげるフォルティス。
「やっぱりもらえないわ。
私、もらってばっかりだもの。
ものが欲しくて来たわけじゃないし。」
フォルティスの真意が分からないから、突き放してしまう。
「あげたかったのもあるが、今日のことを覚えていて欲しいからだと言ったら?」
一層真面目な顔をしている。
「そんな、もらわなくても忘れないわ。」
「いや。
記憶だけならすぐに消えるが、ものは捨てるまで残る。
しかもリリなら捨てにくくて捨てないだろう?
もらってくれないか?今日が楽しかったのなら。」
こちらの様子を伺うように、犬のような顔をしている。
そんな言い方されるのはずるい。
「うん、楽しかったわ。ありがとう。
こんなにきれいなの、もらっちゃってどうしよう。
お返し準備してなくてごめんなさい。」
「そんな、いらないよ。
あのな、リリ。
好きだって気持ちは交換じゃないんだよ。
何かしてあげたいって気持ちは無償なんだ。
お礼を期待するのは愛情じゃなくて押し付けだよ。
俺は押し付けたいんじゃない。」
私の目を見て、ゆっくり言葉を選んで伝えてくれる。
フォルティスは高価なお礼を期待している他の人とは違うのかしら。
他の人からの好意とは何か違う気はする。
お父様もお母さんも私を愛してくれていたように、この人も愛してくれるの?
この人だけは信じられるかもしれない。
それに自分から信じないと信頼は築けないものね。
「私ね、あなたが他の爵位目当ての人と絶対に違うって信じられる気がするわ。」
「そうか。
もし、疑わしいと思ったら遠慮なく聞いてくれ。
リリを傷つける嘘はつかないから。」
そっと私の手を握って誓うように、呟く。
「うん。ありがとう。
今日はね、本当に楽しかったの。
素直にお礼が言えなくてごめんなさい。」
これは本心。
こんなに気があうとは思わなかったの。
あのあと、フォルティスは安心して、ぐっすり眠ってしまった私を起こすのが忍びないと言って、私を客間まで運んでくれたらしい。
目が覚めたとき、自分が屋敷のソファーに横になっていてびっくりした。
お父様はフォルティスに、お礼を言っていたとマリンが教えてくれたから、帰って来るのが遅くなったことで怒られてはいないはず。
マリンはすごく興奮していて、大変だったわ。
「フォルティス様がリリアンヌ様を抱いてお運びになっていたのは1枚の絵画のようでした!」
とか、
「リリアンヌ様をソファーに寝かせたあと、すごく愛しそうに頭を撫でておられましたよ!」
とか、
「たくさん動いて疲れただろうから、起こさなくていいと気づかっていらっしゃいました!」
とか。
マリンの方が私よりも真っ赤になっていて、何度もお似合いです!と言ってくれた。
私は人にそこまで優しくしてもらうのは、初めてなのでなんだかくすぐったい気持ちがした。
そして、後日、マリンの提案で、お出かけのお礼と寝落ちしてしまったおわびにお茶をしたの。
何度も美味しいと繰り返すフォルティスに、笑いが止まらなくなって、謝っても、拗ねてしまって大変だったり。
どんどん違う表情を見せてくれるのが嬉しい。
会ったばかりなのに、すっかり心を許してしまっているのは、今までの経験上、危険なことだと分かっているのに。
フォルティスだけは違うと思っているのかしら。