Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
最初から、フォルティスは私の内面を見てくれていたのね。

「最初は誰か分かっていなかったけど、少したってから令嬢だったって気づいたんだ。

近くの大人に言われて、恥ずかしかったよ。」

「そんなことないわ。すごく嬉しかったのよ。

褒められることはあっても、認めてもらえたのは初めてだったから。」

周囲の大人たちから褒められることは何度もあったけど、自分を認めてもらえた達成感はなかった。

「だから、つまり、リリのことを見ている人もたくさんいるってことだ。

家族や使用人、俺もな。優しさを知ってるよ。

そういう内面の美しさが出ているから、安心して堂々としていてくれ。

明日のエスコート、させてくれるか?」

やっと分かった気がする。

フォルティスになら、全部をゆだねても大丈夫。

「えぇ、お願いします!

たぶんすごく緊張してしまうと思うけど、頑張るわ。」

声が裏返り、緊張していることがバレバレだ。

「くくっ、今から緊張してるだろ?

任せておけ。楽しく過ごそうな。

2時間くらい、あっという間だよ。」

そう言って、私の頭をポンポンと撫でて、帰るために立ち上がった。







「良かったですわ。

リリアンヌ様が無事に、フォルティス様のエスコートで行くことになって。

きっとリリアンヌ様なら上手くデビューできますよ。

ダンスもお上手ですし。」

髪に香油を塗り込み、丁寧にすいてもらう。

マリンの手つきは繊細で、すごく優しい。

「そんなことないわ。

家のパーティーぐらいでしか踊ったことないもの。

練習しているとはいえ、失敗してしまいそうで、怖い。」

フォルティスにも恥をかかせてしまうことになるし。

「それは、フォルティス様のリードに任せておけば大丈夫ですよ。

普通は男性のリードが上手いかによるので。

それよりも!

きっとフォルティス様はすごくおモテになりますわ。

リリアンヌ様がご挨拶に回っている間に、他のご令嬢がたむろしてしまうと思います。

そこで負けずに取り返さなければ!」

鼻息が聞こえそうなほど、自慢気な顔をするマリンはすごくかわいい。

「そうよね、エリート騎士様ですもの。

取り返すなんてできるかしら。私のものではないのに。」

フォルティスがどう考えているか分からない。

ここででしゃばって勘違いしてると思われたら、恥ずかしい。

「リリアンヌ様はフォルティス様をどう思っているのですか?」

コルセットを結び、ドレスに袖を通す。

さらっと聞かれた質問は、核心をつくもので。

「それは、どういう意味で?」

焦っているのがバレないように、いつも通りを意識して聞き返す。

「そうですね、例えば誕生日にプロポーズされて、たくさんお出かけをしましたよね?

1人の男性としてどう思っていらっしゃいますか?」

今まで、たくさん考えたことがあったけれど、昨日話して答えが出た気がするわ。

「好き、なんだと思うわ。

でも、初めてだから確信がないのよ。

どうなったら好きなのかしら。」

なんだかんだ、隠そうと思ったのに正直に打ち明けてしまった。

「そうですね、世間的には嫉妬してしまったら、という人が多いですかね。

他にも離れるのが寂しいとか、離れていても考えてしまうとか。

その人で頭がいっぱいって感じです。」

嫉妬、、、したことがないわ。

離れるのはいつも寂しいし、馬車から降りるのも嫌だけど、、、、

そんなにずーっと考えていたりはしてない気がする。

1日のどれくらい考えていたら好きって言えるの?


まだ、好きとはいえないのかもしれない。

「どうですか?なんかピンときますか?」

「うーん、あんまり。

嫉妬はしたことがないの。

他の女性の名前が出てきたこともないし。

でも、いつもバイバイするのは寂しいのよ。」

思っていることを全部口に出して、意見を求めるしかない。

「そうですか、、、きっとこの社交シーズンの間に分かると思いますよ。

リリアンヌ様のペースでいいんですから。」

ちょっと残念そうな感じを隠しきれない様子で、ため息をつかれた。

私だって、自分の気持ちに確証がほしいわよ。
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