Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
2人とも必要最低限の会話しかせずに、私の家に着いてしまった。

「それで、リリアンヌ様はどうしたいですか?」

ドレスを脱いだり、化粧を落としたりしながら、今日あったことを全て話す。

マリンに全部話して、すっきりしたい。

「仲直りしたいわ。

傷つけるつもりはなかったから、謝りたい。」

「フォルティス様は、たぶん明日は今まで通りにしてくださると思いますよ。

ですが、私はリリアンヌ様もフォルティス様も、どちらも悪くないと思います。

いえ、どちらも少しずつ悪いのだと思います。」

どういうこと?

「フォルティス様はきっと不安になってしまったんだと思いますよ。

それを押さえ込んでいたんでしょう。」

私から話を聞いただけで、分かるなんてすごい。

「不安になんてなるのかしら。

いつも自信を持っているように見えるわ。」

「どんな人だって不安にはなります。

自分は好きだけど、リリアンヌ様はいつか好きになってくれるのか、もしかしたら好きになってもらえることはないんじゃないか、とか。

他の男の人と踊って、その人を気に入ってしまったどうしよう、とかですね。

私はフォルティス様ではないので、全てが分かるわけではありませんが、きっとそうだと思いますよ。」

確かに、よく考えるとそういうことだったのかと気づいた。

私の態度が原因で、フォルティスを不安にさせていたなんて。

「私はどうしたらいいのかしら。」

「話をしっかり聞くことでしょう。

そうして向き合うことが必要ですよ。」

「話は聞いていると思うんだけど。」

「どんな気持ちで好きだと伝えてくれているか、考えたことはありますか?」

「気持ち?」

そうか、今までは相手との会話の最中に何を考えているのかなんて考えようと思ってこなかった私が、おかしいのね。

「一言一言にリリアンヌ様を好きだという気持ちが詰まっていると思います。

ですが、当人同士の問題に、私はここまで言うべきではありませんでした。」

少し反省したような顔で謝り、洗濯物を持って出て行ってしまった。

一言一言に私を好きだという気持ちが詰まっている?

あんなにさらっと言っていたけれど、フォルティスも緊張していたのかしら。

もしそうだとしたら、私はフォルティスにどんなに嫌な思いをさせていたんだろう。

「ありがとう、マリン。

もう一度よく考えてみるわね。」

聞こえるわけはないけれど、そっと扉に向かって呟く。








私は今日、フォルティスとしっかり話をするつもりで来た。

昨日の夜、寝る前に真剣に考えて、自分がどう思っているかも伝えればいいかもしれないという結論に至ったから。

迎えに来てくれたときは、やはり今まで通りのフォルティスだった。

「フォルティス、私、あなたに話したいことがあるの。

挨拶が終わったら、少し時間をちょうだい。」

目をそらさずに、真剣に伝える。

「急に改まってどうしたんだ?」

不思議そうに首を傾げる。

「昨日、たくさん考えたの。」

「待て、俺があの言い方で傷つけたからか?」

慌てて訂正するフォルティスの勢いに、少し驚いてのけ反ってしまった。

「え?違うわ。

そうじゃなくて、、、」

話の続きをしたかったけど、馬車が正面に着いたので、すぐに降りなくてはいけなくなってしまった。

「庭先のベンチで待ってる。」

「うん。ありがとう。」

会場に入って一言だけ囁くと、フォルティスは知り合いの方に歩いていってしまった。







「では、私はこれで。」

「えぇ、またお話しましょう。

貴方のお母様とは仲が良かったの。

おうちにもお邪魔したことがあるのよ。」

「そうなのですか?

また今度詳しく教えてください。」

今日の分の挨拶は全部終わったわね。

そろそろ行かないと。






庭に出て、フォルティスを探す。

薔薇の香りが風に乗って強烈に香る。

王宮の庭園は国1番だと言われている。

「あ、いたいた。ごめんなさい、遅くなって。」

「全然。寒いだろ?これを羽織ってろ。」

ふわっとかけてもらった上着はいい香りがする。

やっぱり優しい。

「あのね、、、」

言い出し方が分かんないよ、、、

自意識過剰みたいになるし

「なぁ、昨日みたいなことを言わないし、しないって約束するから、もう少しだけチャンスをくれないか?

めんどくさいことを言っているのは分かってるけど、諦めきれないんだよ。

せっかく仲良くなれたと思ったのに。

だめか、、、?」

一気にまくし立てるフォルティスは、初めて見た。

「待って?

フォルティスが何の話をしているか分からないんだけど、、、

私、あなたからのプロポーズを断ろうとしているんじゃないよ?」

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