Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
フォルティスが帰ってきた日、私の覚悟はどこからかきた風にさらさらと飛ばされた。

めまいがして、上手く呼吸ができない。

自分の見ている景色が信じられない。ううん、信じたくない。

フォルティスが、王女をエスコートして階段を降りてくる。

それはそれはお似合いの様子。

すらりとしたハイネ王女は、高身長のフォルティスの横に立ってぴたりとはまる。

それでも、自分のことを好きだと言ってくれていたフォルティスが、しかも、今日気持ちを伝えようと思っていた彼が、ハイネ王女のエスコートをしていることの意味が分からない。

目が合わないうちに今日はもう帰ろうと、踵を返して扉に向かう。





ホールから出て、私を呼ぶ声が微かに聞こえたので、慌ててスピードを上げる。

馬車置き場の一番手前に止まっている、自分の馬車に駆け寄り、御者に声をかける。

「今すぐ出てちょうだい。やっぱり今日は急いで帰りたいの!」

「お、お嬢様!?

わ、分かりました。お乗りください。

カーテンもお閉めした方がよろしいかと。

では、出発いたしますよ。やぁっ!」

いつものゆるやかなスタートではなく、急発進だったので、必死に窓枠に掴まる。

すぐ近くだったので、あっという間に着いた。






真っ青な顔で降りた私を、走ってきたマリンが支えてくれた。

「リリアンヌ様!?

どうなさったんですか?

体調でも悪くなりましたか?」

心配そうに体のあちこちを見ながら、聞かれる。

何と答えればいいのか分からず、答えられない。

「とりあえず、今は大丈夫よ。」

部屋に着くまで支えてもらったけれど、マリンは何か聞きたそうな雰囲気を出しながらも、そっと察して、何も聞いて来なかった。

「お医者さまをお呼びしましょうか?」

「いらないわ。少し横になりたいだけなの。」

「かしこまりました。

何か欲しいものがあれば、いつでも呼んでください。

隣の部屋におりますので。」

いつも以上に控えめに言って、心配そうにじっと見てから、部屋を出ていった。




「えぇ。ありがとうマリン。」

閉まる直前に言ったので、聞こえたか聞こえてないかは分からない。
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