Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
「これは、私でも覚えているくらい、お母さんがよく付けていたわ。
お父様は、お母さんとの思い出の品を、独り占めするんですもの。
返してだなんて、ケチだわ。
それでも、そのくらい愛してるってことよね。」
「はい。
リリアンヌ様もこれを付ければ、勇気が出ますね。
ドレスは私もそれがいいと思います。
いえ、それしかないかと。
こんなに素晴らしい出来上がりのドレスは見たことがありませんから。」
そう言って、ラックから外してドールに着せてお手入れをしてくれる。
「そうね。
装飾品は、そのネックレスとこのピアスだけにするわ。
髪のトリートメントだけでも、できたらいいのだけど。」
私の無茶振りにも完璧に答えてくれる。
「もちろんです!
今、岩塩パックの手配中です。
そろそろできるかと。向かいましょう。
ヘアも同時に致しますね。
昼食も、その後すぐに。」
本当に、仕事のできる人だ。
「ありがとう。マリン。
マリンのおかげで、頑張れているのよ。」
夏も近くなり、屋敷の庭の花たちも咲き誇っている。
東屋に並べられた、いつものお茶セットと、いつもの席に座っているフォルティス。
いつもと何も変わらない姿に、夢だったのかもしれないと思う。
けれど、近づき目が合うと唇を噛み、辛そうな顔をしているのが分かった。
私を振ることに少しでも、残念だって思ったり、申し訳ないと思ってくれていたならば報われる気がする。
小さく深呼吸をして、向かい合う席に座った。
いつもは隣り合わせに座るけれど、今日だけは最後に顔をしっかり見て、覚えておきたい。
一瞬の間の後、口を開いた。
「来てくれてありがとう。
私からも、伝えたいことがあったから、ちょうど良かったわ。」
いつもの自分の声とは違う気がするくらい、震えている。
でも、これが最後になるから、1番記憶に残るように笑顔でいたい。
そう思うのに、、、目の前が霞んで見える。
顔も強ばって、口角を上げられない。
奥歯を食いしばって、涙を堪える。
泣くもんか。
『リリアンヌも話したいことが、あるそうだ。』
と公爵から、返事が来て、信じられないと思いながらも有頂天になった。
ピンチなことに変わりはないが、会いたかった。
大急ぎで髪を整えてもらって、家の1番頑丈な金庫に入れてあった指輪の入った箱を出した。
これを、遠征前にオーダーしに行ったときは、柄にもなく全身に汗をかくくらい緊張した。
リリの指の太さは、マリンに聞いてあるからばっちりなはず。
「裏に文字を彫ってください。」
彫ってもらった言葉は、我ながらすごくカッコつけたと思ったが、普段つけているのなら見えない。
そう思えば、恥ずかしさもない。
やっと自覚したが、自分の素の言葉は、なかなか恥ずかしいことばかりだったんだと気づいた。
少し早めに屋敷に着いた俺を、呼び止めたのは公爵家当主本人だった。
「君が、ここ数日面倒なことを対処していたと、カイから聞いた。
もし、何か合ったら相談しなさい。
絶対に君を助けると約束するよ。絶対にな。
それに、君のことを信頼しているんだ。
あんなに毎日楽しそうなリリを見れて、本当に嬉しかったんだよ。
ありがとう。」
心に誓った。
必ず、リリを幸せにすると。
それをもう一度、はっきりと思い出し、口にする。
「はい。
必ず、誤解を解いて許してもらいます。
彼女のことを幸せにできるのは、俺だとおこがましいですが、信じていますから。
いい報告ができるように頑張ります。」
「あぁ。楽しみにしてるよ。
なかなか、素直になれない娘を持つと大変なんだ。」
公爵と別れて、約束の東屋に向かう。
まだリリが来ないから、うろうろとして時間をつぶす。
こんなに緊張していては、話したいことも伝えられずに終わってしまう。
リリのくれた香袋はずっと持って歩いているから、匂いが薄くなってしまっている。
でも、覚えている香りが俺を落ち着かせてくれる。
きぃっと音を立ててテラスへの扉が開くと、リリの姿が見えた。
心臓が嫌なリズムを刻む。
恐る恐る振り向くと、決意を固めた表情のリリと目があった。
その決意は、俺との決別を意味しているのだろうか。
花の垣根を越えると、全身が見えた。
俺と一緒に作りに行ったドレスを着ている。
どういう意味なのか分からなくなる。
それでも、俺と距離を空けて正面に座ったのを、見るとやはりそうなんだろうと思った。
どう切り出したらいいか分からず、言葉が出てこない間に、リリから切り出された。
「来てくれてありがとう。
私からも、伝えたいことがあったから、ちょうど良かったわ。」
伝えたいことって、、、
もう手遅れなんだろうか、、、
「ん、何?
俺も伝えたいことがあるんだ。でも、お先にどうぞ。」
私とは、目も合わせてくれないの?
何を言われるのか分からなくてリリの目を見れない。
「うん。ありがとう。
あのね、、、私のこと、もう好きじゃなくなっちゃった?」
言っちゃった、、、
なんでそんなことを聞くんだ、、、?
好きに決まってるのに。
何を確認したいんだろうか。
「私はね、フォルティスが好きって言ってくれている間は、気づかなかったの。
でもね、この前ハイネ王女様と寄り添っているのを見たら、すごくもやもやして。
私のでもないのに、触らないでって思った。
やっと気づいたの。もう手遅れかもしれないけど。
私、フォルティスのことが好き。大好きなの。」
言ってしまった。
1度口を開いたら、もう夢中だった。
練習した通りではなかったけど、言いたいことは全部言えたはず。
お父様は、お母さんとの思い出の品を、独り占めするんですもの。
返してだなんて、ケチだわ。
それでも、そのくらい愛してるってことよね。」
「はい。
リリアンヌ様もこれを付ければ、勇気が出ますね。
ドレスは私もそれがいいと思います。
いえ、それしかないかと。
こんなに素晴らしい出来上がりのドレスは見たことがありませんから。」
そう言って、ラックから外してドールに着せてお手入れをしてくれる。
「そうね。
装飾品は、そのネックレスとこのピアスだけにするわ。
髪のトリートメントだけでも、できたらいいのだけど。」
私の無茶振りにも完璧に答えてくれる。
「もちろんです!
今、岩塩パックの手配中です。
そろそろできるかと。向かいましょう。
ヘアも同時に致しますね。
昼食も、その後すぐに。」
本当に、仕事のできる人だ。
「ありがとう。マリン。
マリンのおかげで、頑張れているのよ。」
夏も近くなり、屋敷の庭の花たちも咲き誇っている。
東屋に並べられた、いつものお茶セットと、いつもの席に座っているフォルティス。
いつもと何も変わらない姿に、夢だったのかもしれないと思う。
けれど、近づき目が合うと唇を噛み、辛そうな顔をしているのが分かった。
私を振ることに少しでも、残念だって思ったり、申し訳ないと思ってくれていたならば報われる気がする。
小さく深呼吸をして、向かい合う席に座った。
いつもは隣り合わせに座るけれど、今日だけは最後に顔をしっかり見て、覚えておきたい。
一瞬の間の後、口を開いた。
「来てくれてありがとう。
私からも、伝えたいことがあったから、ちょうど良かったわ。」
いつもの自分の声とは違う気がするくらい、震えている。
でも、これが最後になるから、1番記憶に残るように笑顔でいたい。
そう思うのに、、、目の前が霞んで見える。
顔も強ばって、口角を上げられない。
奥歯を食いしばって、涙を堪える。
泣くもんか。
『リリアンヌも話したいことが、あるそうだ。』
と公爵から、返事が来て、信じられないと思いながらも有頂天になった。
ピンチなことに変わりはないが、会いたかった。
大急ぎで髪を整えてもらって、家の1番頑丈な金庫に入れてあった指輪の入った箱を出した。
これを、遠征前にオーダーしに行ったときは、柄にもなく全身に汗をかくくらい緊張した。
リリの指の太さは、マリンに聞いてあるからばっちりなはず。
「裏に文字を彫ってください。」
彫ってもらった言葉は、我ながらすごくカッコつけたと思ったが、普段つけているのなら見えない。
そう思えば、恥ずかしさもない。
やっと自覚したが、自分の素の言葉は、なかなか恥ずかしいことばかりだったんだと気づいた。
少し早めに屋敷に着いた俺を、呼び止めたのは公爵家当主本人だった。
「君が、ここ数日面倒なことを対処していたと、カイから聞いた。
もし、何か合ったら相談しなさい。
絶対に君を助けると約束するよ。絶対にな。
それに、君のことを信頼しているんだ。
あんなに毎日楽しそうなリリを見れて、本当に嬉しかったんだよ。
ありがとう。」
心に誓った。
必ず、リリを幸せにすると。
それをもう一度、はっきりと思い出し、口にする。
「はい。
必ず、誤解を解いて許してもらいます。
彼女のことを幸せにできるのは、俺だとおこがましいですが、信じていますから。
いい報告ができるように頑張ります。」
「あぁ。楽しみにしてるよ。
なかなか、素直になれない娘を持つと大変なんだ。」
公爵と別れて、約束の東屋に向かう。
まだリリが来ないから、うろうろとして時間をつぶす。
こんなに緊張していては、話したいことも伝えられずに終わってしまう。
リリのくれた香袋はずっと持って歩いているから、匂いが薄くなってしまっている。
でも、覚えている香りが俺を落ち着かせてくれる。
きぃっと音を立ててテラスへの扉が開くと、リリの姿が見えた。
心臓が嫌なリズムを刻む。
恐る恐る振り向くと、決意を固めた表情のリリと目があった。
その決意は、俺との決別を意味しているのだろうか。
花の垣根を越えると、全身が見えた。
俺と一緒に作りに行ったドレスを着ている。
どういう意味なのか分からなくなる。
それでも、俺と距離を空けて正面に座ったのを、見るとやはりそうなんだろうと思った。
どう切り出したらいいか分からず、言葉が出てこない間に、リリから切り出された。
「来てくれてありがとう。
私からも、伝えたいことがあったから、ちょうど良かったわ。」
伝えたいことって、、、
もう手遅れなんだろうか、、、
「ん、何?
俺も伝えたいことがあるんだ。でも、お先にどうぞ。」
私とは、目も合わせてくれないの?
何を言われるのか分からなくてリリの目を見れない。
「うん。ありがとう。
あのね、、、私のこと、もう好きじゃなくなっちゃった?」
言っちゃった、、、
なんでそんなことを聞くんだ、、、?
好きに決まってるのに。
何を確認したいんだろうか。
「私はね、フォルティスが好きって言ってくれている間は、気づかなかったの。
でもね、この前ハイネ王女様と寄り添っているのを見たら、すごくもやもやして。
私のでもないのに、触らないでって思った。
やっと気づいたの。もう手遅れかもしれないけど。
私、フォルティスのことが好き。大好きなの。」
言ってしまった。
1度口を開いたら、もう夢中だった。
練習した通りではなかったけど、言いたいことは全部言えたはず。