Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
「よほど大きな花屋でなければ用意できないでしょうね。
では花瓶を用意します。どこに置きましょうか。」
きょろきょろと見回して、大きな花瓶を置ける所を探す。
「そうね、窓の傍がいいだろうし、寝室の小机に置いておいてちょうだい。」
「かしこまりました。」
ちょうどよく花瓶を持って現れたレインに花束を預け、水を汲みに行こうとマリンは立ち上がった。
「ありがとう。」
花瓶を手に取り立ち上がったマリンのエプロンから、何かが落ちる。
かさっ
「あら、何か落ちたわよ?」
「あ、すみません。カードですね。
花束と一緒に来ていたのでしょう。どうぞ。」
小さな宛名も書いていないカードだった。
黒地に金のインクで角張った字でこう書かれていた。
”19歳の誕生日おめでとう。
君の誕生日パーティーで、ようやく会えることを楽しみにしているよ。
もし、気に入ってくれたのならば、あげたものは身につけてくれないか?”
「ですって。カードがついていたのは初めてよね。
でも送り手の名前がないわ。
これじゃあ、誰から来たのか分からないじゃない。」
毎年、母がなくなってからの誕生日にプレゼントを贈ってくれる人がいる。
誰からか分からないけれど、どれも欲しかったものや、好みのものばかり。
嬉しいけれど、少し怖くてお父様に相談したら、王宮の騎士からだ、と教えてもらえた。
「心配しなくて大丈夫だ。好意はありがたく受け取りなさい。」
そう言ったお父様はもしかしたら知り合いなのかもしれないと思ったけれど、それ以上何も教えてくれなかった。
カイは騎士団のフェニックスの一員だから、団員のことをなんとなく知っているかと思ったが、分からないとあっさり言われてしまった。
「リリアンヌ様、もしお気に召したのでしたら、パーティーに着て参加したらどうでしょうか?」
畳まれていたシワを取るためにクローゼット前のトルソーにかけながらマリンが言った。
私はプレゼント開封が半分終わったので、紅茶を入れてもらい、休憩をしていた。
ミルクティーを味わっていた私は思いもよらない提案をされたので、驚いてしまった。
「え?今日の?」
聞き返す私に歯切れよく答えるマリン。
「はい。幸いまだ選んでおりませんし。」
「そうねぇ、、、、。そうしましょうか。
デザインも最新だし、なぜかサイズもぴったりだもの。」
そう。
なぜか、ドレスのサイズが私にぴったりにできているのだ。
この屋敷か作り手の中に教えた人がいるのだろう。
誰も何も教えてくれないので、もう考えるのも無駄だと分かった。
危険はないと分かっているので、気に入ったものは着た方がいいはず。
「では、合いそうな靴とアクセサリーだけ選びましょうか。」
「そうね。今からやるわ。
午後はマナーの確認と準備でいいわよね。」
ドレッサーの入り口を開けてもらうと、カラフルなドレスや靴の棚、アクセサリーが種類ごとに分けられた小箱がぎっしりと詰まっている。
増え続けるばかりで、サイズがあわなくなったものは質屋に売って、慈善事業の費用にしているが、普段使いのドレスは70着を楽に越えている。