Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
後悔と反省
光の届かない地下牢は湿度が高く、湿っていた。
永遠と続く牢の中、他の囚人と離れて入れられたらしく、人の気配が全くない。
あのにぎやかな城内とかけ離れたここは自分と向き合うのにもってこいの場所だった。
分かることは1つ。
自分は嵌められたということ。
産業大臣のバレンシアはいつから狙っていたのだろうか。
もしかしたら、あの食中毒を起こした犯人もバレンシアに繋がっていたのかもしれない。
石畳で転がっている背中からどんどん冷えていく地下牢のなか、閉じ込められている。
まさか、自分も凶悪犯に連ねられて、最高レベルの警備対象になるとは思いもしなかった。
黒幕は全て俺だということになったから、デガン様は公爵から子爵にまで格を落とされただけで、執務室長の任は解かれていない。
これまで通りの働きをしていたら、元の公爵の地に戻るのは容易いだろう。
ただ、娘を奪われた悲しみですっかり弱ってしまったらしい。
客間に見張りを付けた状態で軟禁中らしいが、食事が進まないと警備の者から聞いた。
結果に気に入らない連中に毒を盛られることも考えられるから、不用意に飲み食いするのはよくないが、余りに何も食べないのは体に悪い。
せめて、リリの無事が確保されたことだけでも確認できれば、少しは元気になるだろうか。
どうにかリリに、事の詳細を伝えなければ騙されたまま、シェヴァ王子と結婚してしまうかもしれない。
確かに経歴に傷のついた自分よりは何倍もいい嫁ぎ先だが、到底認めたくない。
今はまだ、飼っている小型の猫しか使えないが、カイと連絡がつけば、全てを解決できるはずだ。
「おい、食事を持ってきたぞ。
壁に背中をつけて座れ。」
横柄な態度の警備は騎士団ではない。
騎士団だと、俺の言葉を聞き入れてしまうかもしれないからとワイバ伯爵が余計な進言をして、所有の警備を差し出したらしい。
おかげで話し相手にはならないが、隙だらけなので、いざと言うときは大人しくさせられる。
従順に従う振りをしていれば、必ず隙を見せる。
味のしないスープらしき汁と、がっちがちの黒パンを食べると思い出すのは、養子になる前のことだ。
食事に興味を持たず、生きるための手段だった。
あの頃は貪欲に抜け目なく、自分の価値をあげようとしていた。
それなのに、リリと結婚できそうだと分かると慢心してこのざまだ。
2度と相手を下には見ない。
これは痛い経験だ。
こんな俺では家督を継ぐ以前に、騎士団として認められる訳はない。
手を抜き、気を抜いたことの後悔ばかりで、前向きな計画案も出てこない。
今はただ、カイの元に送ったミィが帰ってくるのを待つしかない。
ミィならば、地下までも人の目をくぐり抜けて戻ってきてくれるはずだ。
思えば出会った頃から、俺の言っていることが伝わっているようだった。
どこか人間味のある不思議な猫。
雨の日に、俺の使う馬車の下にいて片方の足を引きずっていた。
見るに見かねて、連れて帰り治療をして食べ物を与え続けるとすごくなついた。
しかも、俺の行動パターンを把握してからは、忘れ物をしていることを伝えようとしてくれたり、使用人が腹痛でしゃがみこんで、立ち上がれないことを、その仲間に知らせたり、言葉は通じないけれど、仲間のようだった。
そこからは仕事や遠征にも連れて行って、逃げ遅れた人がいないかの確認や、伝達係としての仕事をしてもらった。
アニマルセラピーみたいに、ケガをした隊員に寄り添って癒してあげたりもしていた。
だから今回もいつものように、『王子に嵌められた』という言葉の順番を覚えさせて送り出した。
無事にカイの元へ着いたら、カイが準備した紙を前足で指して、意味を伝えてくれるはずだ。
一刻も早く解決しなくては。
永遠と続く牢の中、他の囚人と離れて入れられたらしく、人の気配が全くない。
あのにぎやかな城内とかけ離れたここは自分と向き合うのにもってこいの場所だった。
分かることは1つ。
自分は嵌められたということ。
産業大臣のバレンシアはいつから狙っていたのだろうか。
もしかしたら、あの食中毒を起こした犯人もバレンシアに繋がっていたのかもしれない。
石畳で転がっている背中からどんどん冷えていく地下牢のなか、閉じ込められている。
まさか、自分も凶悪犯に連ねられて、最高レベルの警備対象になるとは思いもしなかった。
黒幕は全て俺だということになったから、デガン様は公爵から子爵にまで格を落とされただけで、執務室長の任は解かれていない。
これまで通りの働きをしていたら、元の公爵の地に戻るのは容易いだろう。
ただ、娘を奪われた悲しみですっかり弱ってしまったらしい。
客間に見張りを付けた状態で軟禁中らしいが、食事が進まないと警備の者から聞いた。
結果に気に入らない連中に毒を盛られることも考えられるから、不用意に飲み食いするのはよくないが、余りに何も食べないのは体に悪い。
せめて、リリの無事が確保されたことだけでも確認できれば、少しは元気になるだろうか。
どうにかリリに、事の詳細を伝えなければ騙されたまま、シェヴァ王子と結婚してしまうかもしれない。
確かに経歴に傷のついた自分よりは何倍もいい嫁ぎ先だが、到底認めたくない。
今はまだ、飼っている小型の猫しか使えないが、カイと連絡がつけば、全てを解決できるはずだ。
「おい、食事を持ってきたぞ。
壁に背中をつけて座れ。」
横柄な態度の警備は騎士団ではない。
騎士団だと、俺の言葉を聞き入れてしまうかもしれないからとワイバ伯爵が余計な進言をして、所有の警備を差し出したらしい。
おかげで話し相手にはならないが、隙だらけなので、いざと言うときは大人しくさせられる。
従順に従う振りをしていれば、必ず隙を見せる。
味のしないスープらしき汁と、がっちがちの黒パンを食べると思い出すのは、養子になる前のことだ。
食事に興味を持たず、生きるための手段だった。
あの頃は貪欲に抜け目なく、自分の価値をあげようとしていた。
それなのに、リリと結婚できそうだと分かると慢心してこのざまだ。
2度と相手を下には見ない。
これは痛い経験だ。
こんな俺では家督を継ぐ以前に、騎士団として認められる訳はない。
手を抜き、気を抜いたことの後悔ばかりで、前向きな計画案も出てこない。
今はただ、カイの元に送ったミィが帰ってくるのを待つしかない。
ミィならば、地下までも人の目をくぐり抜けて戻ってきてくれるはずだ。
思えば出会った頃から、俺の言っていることが伝わっているようだった。
どこか人間味のある不思議な猫。
雨の日に、俺の使う馬車の下にいて片方の足を引きずっていた。
見るに見かねて、連れて帰り治療をして食べ物を与え続けるとすごくなついた。
しかも、俺の行動パターンを把握してからは、忘れ物をしていることを伝えようとしてくれたり、使用人が腹痛でしゃがみこんで、立ち上がれないことを、その仲間に知らせたり、言葉は通じないけれど、仲間のようだった。
そこからは仕事や遠征にも連れて行って、逃げ遅れた人がいないかの確認や、伝達係としての仕事をしてもらった。
アニマルセラピーみたいに、ケガをした隊員に寄り添って癒してあげたりもしていた。
だから今回もいつものように、『王子に嵌められた』という言葉の順番を覚えさせて送り出した。
無事にカイの元へ着いたら、カイが準備した紙を前足で指して、意味を伝えてくれるはずだ。
一刻も早く解決しなくては。