Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
新妻の策略
朝、ろくに寝られないままマリンに起こされた。
寝坊ながらも、手紙は?と聞けば、返ってくる悲しそうな、いいえ、まだです。だけ。
ここから後1時間でシェヴァ王子との朝食なので、それまでに間に合わなければ連絡手段もなくなるので、事の真実を知らされないままとなってしまう。
「そう、準備をするわ。手伝ってくれる?」
切り替えたように声をかけると同じように切り替えたマリンの気持ちのいい返事が返ってくる。
「はい!
お着替えは最後に致しましょう。
先に顔を洗って来て下さい。」
いつも通りにてきぱきと動き、洗面台に向かうがフォルティスからもらったものたちが目につく。
いくつかの装飾品と、オペラグラス、遠征に行ったときのおみやげの化石と異国の香水。
少しずつ増えていったから、飾り棚の段数を急遽増やしてもらったんだっけ。
これらも持てるだけ、持っていこうと決心して、今度こそ洗面台に向かう。
顔をせっけんで洗い、流しても隈と少し腫れた目がくっきり残ってしまっていた。
夜は音も光もないベッドの上で、寝ようとしてもフォルティスとお父様のことが心配で目が覚めてしまった。
散歩がてらにクローゼットでドレスを決めようと思ってこっそりベッドを抜け出したのに、フォルティスからもらったドレスが、きらきらと輝いて見えて切なくなってしまった。
そして、無難なフォルティスからもらったものではない別のものにしてさっさと出た。
結局、布団の中で大人しくして、眠りについたのは使用人たちが寝て静まりかえってからだった。
少し多めに粉をはたいてもらって、荒れた目の下を隠す。
紅も1段明るいのを挿したけれど、どんなに色を足したって、どんよりとした顔のままだ。
それでも、自分の行動でフォルティスが不利になるのを避けたいから、笑顔を丁寧に作った。
それに、今この家の中で1番上に立たされているのは私だ。
屋敷の顔ともいえる立場の者が暗い顔をしていられない。
ここが私の正念場だと、気合いを入れた。
「リリアンヌ様、私がついていますから。」
マリンの手がそっと私の背中をさすってくれた。
人の手の温もりは、想像以上に心に滲みると思う。
部屋に持ってきてもらった朝食を無理やり口に押し込んで、ドレスを着せてもらう。
装飾品はシェヴァ王子の好みを、わざわざ側近の方に教えられたので、好きでもないけれど豪華めに盛り付ける。
「フォルティスは装飾なんてなくてもいいって言ってくれたのに、、、」
「リリアンヌ様の魅力に気づいているからこそですよ。
フォルティス様は分かっていらしたので。」
聞かせるつもりのなかった独り言を拾われてしまった。
どんなにフォルティスが自分を愛してくれていたか、さすがの私でも分かる。
自分の中で大きな支えになっていたフォルティスを失って、私は宙ぶらりんだ。
「すみません、遅くなりまして!
こちら、カイ様からのお手紙です!」
そう言って、猛烈な勢いのまま駆け込んで来たのは、若い執事だった。
慌てて礼を言って受け取り、マリンの差し出したペーパーカッターで勢いよく切る。
急いだ様子の文字がぎっしりと並んでいた。
"フォルティス様は無事だ。
捕らえられているが、連絡手段はある。
産業大臣のバレンシアに嵌められたそうだ。
ここからはフォルティス様からの伝言だよ。
「リリはそのまま反抗せずに付いていってほしい。
必ず助けに行くから、危ないことはしないで結婚の準備でもしていてくれ。
元気なリリに会えることを楽しみに頑張るよ。」だと。
俺はありがたいことに疑われていない。
だから、2人とも連絡を取れる。
この犬を絶対に連れて行ってくれ。
鎖には繋がないでね。
リリ姉が無茶しないように、見張っててねマリン。
リリ姉を頼んだよ。カイ。"
フォルティス様はやっぱり悪くなかった!!
ぽたぽたと目からの雫が手紙を濡らしてしまう。
横でマリンも目頭を押さえていた。
2人で喜びに浸ったあと、この後の行動を打ち合わせした。
まず、私はカリオス帝国に好意的な態度をとる。
そして、もしシェヴァ王子に迫られたときは全力で恥ずかしがって避ける。
万が一ダメだったときは、マリンが躾に厳しい侍女として止めに入る。
相手に疑惑を抱かせないようにしつつ時間を稼ぐ作戦だ。
ボーダーラインは手を握られるまでで、それ以上のことをされたら、ショックを受けた振りをして、閉じ籠るつもり。
マリンも他の使用人の前で、私の人見知りの酷さや、読書が好きだということをたくさん言って、大人しくて男の人に慣れていない、箱入り娘像を作り上げると約束してくれた。
そして、2人で情報をできるだけ集めようと決めた。
寝坊ながらも、手紙は?と聞けば、返ってくる悲しそうな、いいえ、まだです。だけ。
ここから後1時間でシェヴァ王子との朝食なので、それまでに間に合わなければ連絡手段もなくなるので、事の真実を知らされないままとなってしまう。
「そう、準備をするわ。手伝ってくれる?」
切り替えたように声をかけると同じように切り替えたマリンの気持ちのいい返事が返ってくる。
「はい!
お着替えは最後に致しましょう。
先に顔を洗って来て下さい。」
いつも通りにてきぱきと動き、洗面台に向かうがフォルティスからもらったものたちが目につく。
いくつかの装飾品と、オペラグラス、遠征に行ったときのおみやげの化石と異国の香水。
少しずつ増えていったから、飾り棚の段数を急遽増やしてもらったんだっけ。
これらも持てるだけ、持っていこうと決心して、今度こそ洗面台に向かう。
顔をせっけんで洗い、流しても隈と少し腫れた目がくっきり残ってしまっていた。
夜は音も光もないベッドの上で、寝ようとしてもフォルティスとお父様のことが心配で目が覚めてしまった。
散歩がてらにクローゼットでドレスを決めようと思ってこっそりベッドを抜け出したのに、フォルティスからもらったドレスが、きらきらと輝いて見えて切なくなってしまった。
そして、無難なフォルティスからもらったものではない別のものにしてさっさと出た。
結局、布団の中で大人しくして、眠りについたのは使用人たちが寝て静まりかえってからだった。
少し多めに粉をはたいてもらって、荒れた目の下を隠す。
紅も1段明るいのを挿したけれど、どんなに色を足したって、どんよりとした顔のままだ。
それでも、自分の行動でフォルティスが不利になるのを避けたいから、笑顔を丁寧に作った。
それに、今この家の中で1番上に立たされているのは私だ。
屋敷の顔ともいえる立場の者が暗い顔をしていられない。
ここが私の正念場だと、気合いを入れた。
「リリアンヌ様、私がついていますから。」
マリンの手がそっと私の背中をさすってくれた。
人の手の温もりは、想像以上に心に滲みると思う。
部屋に持ってきてもらった朝食を無理やり口に押し込んで、ドレスを着せてもらう。
装飾品はシェヴァ王子の好みを、わざわざ側近の方に教えられたので、好きでもないけれど豪華めに盛り付ける。
「フォルティスは装飾なんてなくてもいいって言ってくれたのに、、、」
「リリアンヌ様の魅力に気づいているからこそですよ。
フォルティス様は分かっていらしたので。」
聞かせるつもりのなかった独り言を拾われてしまった。
どんなにフォルティスが自分を愛してくれていたか、さすがの私でも分かる。
自分の中で大きな支えになっていたフォルティスを失って、私は宙ぶらりんだ。
「すみません、遅くなりまして!
こちら、カイ様からのお手紙です!」
そう言って、猛烈な勢いのまま駆け込んで来たのは、若い執事だった。
慌てて礼を言って受け取り、マリンの差し出したペーパーカッターで勢いよく切る。
急いだ様子の文字がぎっしりと並んでいた。
"フォルティス様は無事だ。
捕らえられているが、連絡手段はある。
産業大臣のバレンシアに嵌められたそうだ。
ここからはフォルティス様からの伝言だよ。
「リリはそのまま反抗せずに付いていってほしい。
必ず助けに行くから、危ないことはしないで結婚の準備でもしていてくれ。
元気なリリに会えることを楽しみに頑張るよ。」だと。
俺はありがたいことに疑われていない。
だから、2人とも連絡を取れる。
この犬を絶対に連れて行ってくれ。
鎖には繋がないでね。
リリ姉が無茶しないように、見張っててねマリン。
リリ姉を頼んだよ。カイ。"
フォルティス様はやっぱり悪くなかった!!
ぽたぽたと目からの雫が手紙を濡らしてしまう。
横でマリンも目頭を押さえていた。
2人で喜びに浸ったあと、この後の行動を打ち合わせした。
まず、私はカリオス帝国に好意的な態度をとる。
そして、もしシェヴァ王子に迫られたときは全力で恥ずかしがって避ける。
万が一ダメだったときは、マリンが躾に厳しい侍女として止めに入る。
相手に疑惑を抱かせないようにしつつ時間を稼ぐ作戦だ。
ボーダーラインは手を握られるまでで、それ以上のことをされたら、ショックを受けた振りをして、閉じ籠るつもり。
マリンも他の使用人の前で、私の人見知りの酷さや、読書が好きだということをたくさん言って、大人しくて男の人に慣れていない、箱入り娘像を作り上げると約束してくれた。
そして、2人で情報をできるだけ集めようと決めた。