Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
カリオス帝国の王城は城というよりも、城塞というほうが的確だと思えるほど、重厚な作りだった。
夕方に入城したからか、得体の知れない大きな壁や、幅が広く、底の見えない堀、大きな音を立てて下りてくる跳ね橋などは、我が国では1度も見ることのないもので、迫力があった。
城自体も、真っ黒でシェヴァ王子によると、火にも傷にも強い、非常に硬い鉱石が使われているらしい。
常に、領土を広げている帝国は、逆に攻めいられることも想定して平野ではなく山の中に城と城下町を造っているのだろうな。
人の横幅程もある分厚い扉が開く音がして、馬車はそのまま少し進むと、ゆるゆると止まった。
先に降りたシェヴァ王子に手を貸してもらい、降りるとダンスホール並みに広いところだった。
ただ、天井はそれほど高くなく、オーケストラのいる2階席も見当たらない。
そもそも馬車で乗り入れるなど、不思議が多すぎる。
「シェヴァ王子、このスペースは何に使うのですか?
とても広いですね。」
「ここは、兵が並び指揮を受けるところだ。
天候の悪い日はここで、鍛練もする。
もし、敵国が攻めて来たら、ここに領民を匿うんだ。
城下の人がすっぽり入るくらいのスペースはある。」
流暢に説明されて、ダンスホールなどと考えていた自分の考えの甘さや、生きている世界の違いに気づかされた。
「そうなのですか。
初めて見ました。こんなに広いスペースを城内に確保しているなんて、すごいですね。」
「そうでしょう。
リリアンヌ嬢の生きてきた世界とは、全く違うと思いますよ。
この城は、美しさや、過ごしやすさは二の次で、守りの強固さや、見張りのしやすさを重視しているので。
明るいときに外に出ると分かると思いますが、塀の中も、城下も、まっすぐな道はありません。
敵国が侵入することを考えて、見通しを悪くしたり、山の斜面をそのまま守りに使ったりしているんです。
先ほど通った跳ね橋も、縄を1つ切るだけで、下りなくなり、籠城できるようになっているんです。」
1つ1つ説明されると、フォルティスが簡単に潜入できるところではないのでは、と思ってしまう。
他国の密偵なんかも、潜入しようとしているはずだ。
対策をしていないわけがない。
仕事があると言って執務室へ行ったシェヴァ王子と別れて、侍女についていく。
私の寝室だと案内された部屋はシェヴァ王子の続き部屋で、豪華絢爛。
案内してくれた侍女がいなくなってから、2人で顔を見合わせた。
「これは、誰の趣味なのでしょうか。
もしや、先に使うはずの人がいたのではないでしょうか。
一般的な女性向けではありませんから。
明確な1人の趣味に基づいたものでしょう。
ただの客間ではありませんし、これはもう、王太子妃仕様ですよ。」
自信を持つマリンに、同意する。
「えぇ、困ったわね。
私の趣味とは完璧に合致しないわ。」
手際よく荷ほどきしていたマリンが驚いたように、テラスに出てみていた私を呼んだ。
「リリアンヌ様!!
クローゼットの中身がドレスでいっぱいです。
しかも、リリアンヌ様のサイズの。」
急いで見に行くと、確かにそのようだ。
20着以上のドレスがずらっと並んでいる。
しかも、際どいものばかり。
「なんというか、リリアンヌ様の趣味には合いませんね。
露出が多すぎます。
この国の流行りなのかもしれませんが、これはちょっとひどいですね。」
そう言いながら、マリンは1枚1枚見ていく。
おなかの部分がレースで透かしになっていたり、背中ががっぱりと腰の辺りまで見えていたり、スリットが空きすぎていたりと、どれも着ようとは思えない。
「これなんて、下品ですよ。ありえません!」
チュールのような柔らかい素材が首に下げて、胸の前でクロスしているデザインだった。
真っ赤なチュールは男性を誘うような色で、極端に布も少ない。背中から見ると、なにも着ていないようなもの。
「こんな下品なドレスは見たことがありません!!」
マリンは顔を真っ赤にして憤慨している。
なだめようにも、その通りだから何も言えない。
そうして呆れている私たちの部屋に、ノックが響いた。
どうぞ、と声をかけると同時にマリンがクローゼットをそっと閉めて、私の髪をいじる素振りをする。
入ってきたのは、シェヴァ王子の側近だった。
旅用の服装から、軍服に着替えて殺伐とした雰囲気を放っている。
夕方に入城したからか、得体の知れない大きな壁や、幅が広く、底の見えない堀、大きな音を立てて下りてくる跳ね橋などは、我が国では1度も見ることのないもので、迫力があった。
城自体も、真っ黒でシェヴァ王子によると、火にも傷にも強い、非常に硬い鉱石が使われているらしい。
常に、領土を広げている帝国は、逆に攻めいられることも想定して平野ではなく山の中に城と城下町を造っているのだろうな。
人の横幅程もある分厚い扉が開く音がして、馬車はそのまま少し進むと、ゆるゆると止まった。
先に降りたシェヴァ王子に手を貸してもらい、降りるとダンスホール並みに広いところだった。
ただ、天井はそれほど高くなく、オーケストラのいる2階席も見当たらない。
そもそも馬車で乗り入れるなど、不思議が多すぎる。
「シェヴァ王子、このスペースは何に使うのですか?
とても広いですね。」
「ここは、兵が並び指揮を受けるところだ。
天候の悪い日はここで、鍛練もする。
もし、敵国が攻めて来たら、ここに領民を匿うんだ。
城下の人がすっぽり入るくらいのスペースはある。」
流暢に説明されて、ダンスホールなどと考えていた自分の考えの甘さや、生きている世界の違いに気づかされた。
「そうなのですか。
初めて見ました。こんなに広いスペースを城内に確保しているなんて、すごいですね。」
「そうでしょう。
リリアンヌ嬢の生きてきた世界とは、全く違うと思いますよ。
この城は、美しさや、過ごしやすさは二の次で、守りの強固さや、見張りのしやすさを重視しているので。
明るいときに外に出ると分かると思いますが、塀の中も、城下も、まっすぐな道はありません。
敵国が侵入することを考えて、見通しを悪くしたり、山の斜面をそのまま守りに使ったりしているんです。
先ほど通った跳ね橋も、縄を1つ切るだけで、下りなくなり、籠城できるようになっているんです。」
1つ1つ説明されると、フォルティスが簡単に潜入できるところではないのでは、と思ってしまう。
他国の密偵なんかも、潜入しようとしているはずだ。
対策をしていないわけがない。
仕事があると言って執務室へ行ったシェヴァ王子と別れて、侍女についていく。
私の寝室だと案内された部屋はシェヴァ王子の続き部屋で、豪華絢爛。
案内してくれた侍女がいなくなってから、2人で顔を見合わせた。
「これは、誰の趣味なのでしょうか。
もしや、先に使うはずの人がいたのではないでしょうか。
一般的な女性向けではありませんから。
明確な1人の趣味に基づいたものでしょう。
ただの客間ではありませんし、これはもう、王太子妃仕様ですよ。」
自信を持つマリンに、同意する。
「えぇ、困ったわね。
私の趣味とは完璧に合致しないわ。」
手際よく荷ほどきしていたマリンが驚いたように、テラスに出てみていた私を呼んだ。
「リリアンヌ様!!
クローゼットの中身がドレスでいっぱいです。
しかも、リリアンヌ様のサイズの。」
急いで見に行くと、確かにそのようだ。
20着以上のドレスがずらっと並んでいる。
しかも、際どいものばかり。
「なんというか、リリアンヌ様の趣味には合いませんね。
露出が多すぎます。
この国の流行りなのかもしれませんが、これはちょっとひどいですね。」
そう言いながら、マリンは1枚1枚見ていく。
おなかの部分がレースで透かしになっていたり、背中ががっぱりと腰の辺りまで見えていたり、スリットが空きすぎていたりと、どれも着ようとは思えない。
「これなんて、下品ですよ。ありえません!」
チュールのような柔らかい素材が首に下げて、胸の前でクロスしているデザインだった。
真っ赤なチュールは男性を誘うような色で、極端に布も少ない。背中から見ると、なにも着ていないようなもの。
「こんな下品なドレスは見たことがありません!!」
マリンは顔を真っ赤にして憤慨している。
なだめようにも、その通りだから何も言えない。
そうして呆れている私たちの部屋に、ノックが響いた。
どうぞ、と声をかけると同時にマリンがクローゼットをそっと閉めて、私の髪をいじる素振りをする。
入ってきたのは、シェヴァ王子の側近だった。
旅用の服装から、軍服に着替えて殺伐とした雰囲気を放っている。