Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
「リリアンヌ様が少し早く入浴したいそうなので
支度をお願いできますか?」

マリンに続いてひょっこりと顔を出す。

「無理を言ってごめんなさい。」

「「り、リリアンヌ様!?!?」」

「えぇ、突然こんな所まで来てしまってごめんなさい。」

私よりも少し年上の人たちが5・6人いた。

「いえいえ。すぐに準備しますよ。」

「いつも温かいお湯といい香りの入浴剤をありがとう。

おかげでお風呂の時間が凄く楽しいの。」

真剣にお礼を言って頭を下げる。

「いえいえ、私たちにお礼をわざわざ言って下さりありがとうございます。

いつも、当たり前のことだと思われていることに対して、お礼を言って頂けるのは本当に嬉しいです。」

「そんな。当たり前になっているのは皆さんの仕事が完璧だからよ。

これからもよろしくお願いしますね。」

「精一杯務めさせて頂きます。」

笑顔で見送られて廊下に出る。

疲れていたけど、少し元気をもらった気がする。

「みんないい人たちだったわね!

笑顔で優しかったし。」

「リリアンヌ様が労ってくれたからでしょう。

自分たちの仕事に誇りをもってやっていますが、感謝される機会は少ないです。

私はリリアンヌ様からいつも言って頂けますが、普通は言いません。

この国の王族の方は特にそんな傾向があるみたいですね。

だから、喜んでいましたよ。」

自分の仕事に誇りをもっているのは、誰だってできることじゃない。

どんな仕事だって優劣なんてないのだから、みんな尊敬しあえたらいいのに。

もし、フォルティスと2人で統治することができたら、そんな暖かみのある領土にしよう。

みんなが誇りをもって働けるような所に。








3日後、帰って来たシェヴァ王子を大広間で待った。

馬から降りて、目が合うとまっすぐに私の元に来た。

「お疲れさまでした。体調はどうですか?」

「あぁ、元気だよ。ただいま、リリアンヌ。

少し痩せたか?食欲がないのか?」

「いいえ、少し運動不足を解消しているだけです。」

「そうか。後で食事を一緒にとろう。」

「えぇ、分かりました。」

少し疲れた顔をしていたけれど、頭の回転の良さそうな目だけは輝いていた。

自分の部屋に戻る間、少し考えた。

なぜ私を連れて来たのだろう。

地位を守ってくれるだけなら、何か他にあるのかもしれない。

その何かが私たちをこんなことに追いやっているのかもしれない。

それさえ分かれば、フォルティスの冤罪も晴れるかもしれないし、私も国に戻れるかもしれない。

何を考えているのか、分からない相手には戦えない。

「ただいま。シェヴァ王子は無事に帰って来たわ。

晩餐を共にと言われたわ。」

「そうですか、もう少ししたら準備をしましょう。

その前に、カイ様にお手紙を書かれたらいかがですか?

私からの報告書はもう書いてあります。

一緒に届けてもらわなくては。」

「えぇ、そうだったわね。手紙とインクをちょうだい。」

「ありますよ。持ってきますね。」







呼びに来てくれた騎士について歩く。

淡いオレンジのドレスはこの城でたくさん使われている、ろうそくの明かりによく合う。

少し大人っぽい髪型とデコルテを彩るダイヤモンドのネックレス。マリンのセンスの良さが表れている。

テラスにつくと、もうシェヴァ王子は座っていた。

「遅れてごめんなさい。」

「いいや、大丈夫だよ。

これから持ってきてもらうさ。」

「ここ、すごく涼しくていいですね。

山の方まで見えて。」

「あぁ、反対側も海が見えてきれいだが、こっちは国民の暮らしが見える。

あそこの明かりは祭りの明かりだ。

毎年松明を焚いている。

明かりが列になっているそこは、旅籠町なんだ。

飲食店も夜が更けるまでやっている。」

遠くから近く、この国全体を教えてくれようとしている。

国をどれだけ愛しているか分かって、微笑ましい。

自分よりいくつか歳が下なのに、無邪気さを感じた。

「すごい活気がある国なのね。みんな生き生きしてる。」

「あぁ、すごくいい人たちばかりなんだ。

君もきっと好きになる。すぐにね。」

この後の食事も特産品を贅沢に使ったものばかりで美味しくて、たくさん食べてしまった。
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