Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
そこからは、カイやリリについている侍女からの情報を得て、ライバルになりそうな貴族たちを蹴散らし、好みや趣味などを聞いてプレゼントを選んだ。

こそずるいと言われればそれまでだが、ベストな方法だと思っている。

「それで、今日は?明日のデ・エ・トの話ですか?」

俺に奢らせたシュークリームに、かぶり付きながら聞いてきた。

「そうだけど。茶化すなよ。」

悔しいことに俺はこいつにおちょくられることが多くなってきている。

確かにこいつの前では威厳もへったくれもないから、仕方ない。

「リリ姉も楽しみにしてましたけど?」

鼻についたクリームを舐めて、さらっと答える。

「本当か!?」

俺は嬉しさで立ち上がってしまった。

恥ずかしくて咳払いをして座ると、いつにも増してニヤニヤしたカイが教えてくれる。

「はい。今日は朝からドレスを選んでいましたよ。」

こんなに嬉しいことはないだろうな。

踊り出したい気分だ。

自分の愛する人がデートを楽しみにしていてくれるなんて。

俺は幸せ者だな!

絶対に失敗するわけにはいかない!

「リリの嫌いな食べ物はあるか?」

嫌いなものを知っておけば、レストラン選びで失敗することはなくなる。

「酒と、柑橘類だけですかね。」

考えもせず、すぱっと答えられるカイが、内心羨ましい。

「少ないんだな。」

貴族のご令息、ご令嬢というと好き嫌いが激しく、少食というイメージがある。

「まぁ、そうですね。母が厳しかったので。

俺も少ないですが、姉は本当になんでも食べられますよ。」

いいお母さんに育てられたから、あんなにいい子になったんだな。

カイだって、嘘も言い訳もしないさっぱりとした性格だ。

「じゃあ逆に好きな食べ物は?」

本当ならばメモ用紙でも出したいところだが、また笑われるだけなので頭に叩き込む。

「甘いものと、貝類ですかね。」

意外だな。生臭いと大抵の女は嫌がると有名なのに。

でも、俺の好みと近いからいいレストランを知っている。

「それは良かった。

明日の連れて行きたいところにぴったりだ。」

最初はここに連れて行きたいと思って、下見もしてあるのだが、この姉弟には絶対に言わない。

「明日、頑張ってくださいよ。

失敗したときに一月くらい慰めるのはめんどくさいので。」

なんて、ひねくれたことを言うが、付き合いの長さで実は応援してくれているんだと分かる。

「当たり前だ!

慰めるどころかのろけでも聞かせてやるよ!

相談に乗ってくれてありがとうな。」

俺が素直にお礼を言って、プレートを持って立ち上がると後ろから

「次は、新しくできたステーキ屋さんに連れてってください!」

というちゃっかりした声が聞こえた。
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