Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
「リリ、着いたよ。降りられるか?手を貸そう。」

先に降りて、手を差し出してくれる。

「ごめんなさい、ありがとう。」

スマートね。わざとらしくもないし。

「俺の身長に合わせて作ってあるから、車体が普通より高いんだ。

乗り降りしにくくてごめんな。」

本当に申し訳なさそうな声で言われる。

「羨ましいわ。私は人より低いから、、、」

「小さくてかわいいだろ。俺はいいと思うよ。」

さらっと言われたけど、相当恥ずかしい!

こんなこと言われたことないのに。

「そ、そう?

でもドレス選ぶのが大変なのよ。いつも。」

褒められて素直にお礼が言えないこの性格、治したいのに。

辺りを見回すと、親子連れが何組かいるくらい。

潮風が気持ちいい。

まだ海は見えて来ないけど、期待が高まる。

「そうか?俺は悩んだことないから分からないな。」

目があうと、にやっと笑った。

「もう!」

私も調子を合わせて怒ったふりをする。

こんなふうに軽口叩くなんてフォルティスだけだわ。

仲のいい男の子なんていなかったから。

「ははっ、悪い。」

すごく楽しそうに笑ってくれるから、楽しくなる。

「少しくらい分けてくれてもいいじゃない。」

「分けてあげたいよ、、、」

今度は申し訳なさそうな顔をしながらも、口は笑っている。

こんなにたくさんの表情を持っているひとだとは思わなかった。

「悔しい、、、!

私ももう少し伸びるかもしれないわ。」

反応する私のリアクションもいつも以上に大きくなってしまう。

「いや、無理だと思うぞ。」

極めつけに意地悪そうな顔をして、大笑いされた。

「もう、怒ったわ!先に行くわよ!」

本当に怒ったわけじゃないけど、何か仕返ししたいもの。

「いや、一緒に行こう。ほら、手も。

砂は歩きにくいだろ?」

そこで優しさを出してくるのはずるい。

「い、や!」

私にだってプライドはあるもの。

やられっぱなしじゃいられないわ。

「悪かった。そこまで言うつもりはなかったんだよ。

からかうと反応がおもしろくてつい言い過ぎた。」

しょぼんとした顔で謝られてしまう。

「おもしろいことを言ったつもりはないわ。」

「表情がころころ変わるし、手もよく動く。

見ていて飽きないね。ずっと見ていたいよ。」

そんなこと言われたら怒れないじゃない。

「あなたは意地悪だわ。」

悔しまぎれにそう、言い返すけど私の負けだ。

「そうか、そんなふうに君に言われるのは悲しいな。
優しくしていたつもりだったのに。嫌われたか、、、」

え!?

冗談のつもりが本気にされて焦る。

「別に、そこまで言ったつもりはないわ。

あなたは優しいし、話していて楽しいもの。」

「じゃあ、嫌ってないか?」

「嫌ってなんかないわ!

むしろ、、、」





言えるわけないわ!気になる、なんて。

「むしろ?そこで言うのをやめてしまうのか。」

私の顔を覗き込みながら頭を少し撫でる。

「な、仲良くしたいわ!今はこれで精一杯だけど、、、」

「仲良くしたい、か。やっぱりおもしろいな。

求めていた言葉とは違うけど、いいとしよう。」

最後に一撫でくしゃっとすると、するりと離れたいった。

「あなたは意地悪だわ。思ったよりもね。」

最初の王子様のような話し方はどこにいったのよ。

隙さえあれば、いつでもからかってくるんだもの。

「好きな子はいじめたくなるって言うだろ?」

どや顔で言われると何も言い返せなくなる。

「そんなこと分からないわ。

それに私、子どもじゃないもの。」

どうにか言い返す。

別に言い返さなくてもいいのに。

でも、このテンポのいい会話は嫌いじゃない。

「そうだな。好きな人の間違いだった。

まぁ、愛する人とも言えるけどな。」

甘い声で囁かれると足に力が入らなくなるの。

それに顔だって真っ赤だわ。

フォルティスが見てにやにやしてるし、自覚もある。

「愛する人なんて簡単に言うことじゃないわ。」

嬉しかったのに、こんな言い方ばっかり。

「いや。リリ、君は人生最初で最後の愛する人だよ。

今の俺を作ってくれたとも言えるし、一生涯の目標とも言える。

リリ以外となんて結婚したいと思わない。

なんなら、俺の本気が伝わるまで何度だって伝えるよ。」

こんなに胸に迫るような言葉、初めてだわ。

一言一言に力が宿っているようね。

「あ、ありがとう。でも、どうして?

私と会ったのは最近じゃないの?

昔会ったことあったかしら。」

こんなにかっこいい人なら忘れはしないと思うのに。

「そうだ。ずっと前にな。

もしかしたら、覚えていないくらい。

それに、今とは違う身なりだった。

まぁ、少しずつでいいんだ。急ぐつもりもない。」

私が小さい頃ってこと?

違う身なりってことは、養子になる前よね、、、

その頃、どうやって会ったのかしら、、、

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