【完】好きでした。
「ねぇ〜今日は私と遊びに行こ〜♡」
「違うわ!今日は私よ!」
「ちょっと!私は昨日約束したの!どきなさいよ!」
「何よあんた!」
女の子達の争いが始まったかと思った時、
「こらこら、喧嘩しないで?
ほら、今日はみんなで遊びに行こう。ね?」
争いの原因であり、
俺の彼氏の夏が、
なだめに入った。
その場はなんとか収まり、
またみんな夏の周りに集まり喋り出す。
「ね、夏〜。またみんなで、シよ?」
「それいいねー!ねー夏!しよ!」
「いいかもね、じゃあ次は違う場所で…、」
俺は聞きたくなくて、
その場をあとにした。
人気のない場所へ行く。
幸い誰もいないようだ。
俺はヘタレだ。
俺は夏に何も言うことが出来なくて、
別れることも出来なくて、
ずっと曖昧な関係だ。
「はぁ。」
思わずため息が出る。
それにつられて涙が出そうになるが、
ぐっと我慢する。
ここで泣いたら、
とめどなく溢れてくるだろう。
今は我慢だ。
そんなことを思っていると、
コツッコツッ…
と、足音が近づいてきた。
誰だろ。
まぁ、誰でもいいか。
俺は関心がなくなり、
地べたに座り、壁に背中を預け、目を閉じた。
足音が俺の前で止まる。
「柊、俺。」
この声は、橙真だ。
橙真は、
俺の相談に乗ってくれている唯一の親友だ。
「よっ、どした?こんな時間に。授業は?」
「それは俺のセリフだ。ばーか。
……、
…またなんか抱え込んでんだろ。」
「お前には、隠し事できねーな。」
俺がそう言いながら笑うと、
橙真は一回ため息をつき、
それから俺を抱きしめた。
「…橙真?」
「柊、俺には我慢すんな。」
「…橙真、
…俺、これからどうしよう。
もう、辛い。
もう嫌…、」
俺は泣いた。
橙真は俺が泣いてる最中、
ずっと頭を撫でてくれて、
背中をとんとんと叩いてくれて、
俺は、
その優しさと、
暖かさに、
また泣いた。
俺はひとしきり泣くと、少し落ち着いた。
「…あ"り"がど、どう"ま"。」
自分でも驚く程に、鼻声が凄かった。
「ん。少しは落ち着いたか?」
「う"ん"。」
「ほら、鼻。」
鼻声の俺を見兼ねたのだろう、
ティッシュをくれた。
それで鼻をかむと、少し落ち着いた。
「なぁ、柊。」
「ん?」
「その、俺は、お前の味方だから。
だから、もっと俺を頼れよ。」
あぁ、ほんとに良い奴だな。
こんないい友達持てて、俺は幸せだな。
「橙真、ありがとう。
……よしっ、俺、夏と別れてくる。」
「…そうか。」
「ん。
好きじゃなくなるのは、
簡単じゃないと思うけど、
俺、もう、前に進みたいから。」
「ん。
最後の踏ん張り所だな。
俺は、ここで待ってるから。
…かましてこい!」
「おう!」
_______
橙真side
柊が夏のもとへ行った。
頑張れ、俺はここで待ってる。
そんで帰ってきたら、
柊に伝えるんだ、
好きです。
って。