夢物語
***


 西本くんに次に会えたのは、週末になってからのことだった。


 土曜日の夜。


 仕事が休みなので、早く体育館に入って設営の準備をしていると。


 ドアが開いて、ひょっこり現れた。


 「おー。西本。生きてたか」


 警察官である藤本先輩が、西本くんに声をかける。


 「先週末の飲み会から帰宅後、音沙汰ないから、死んだと思っていたよ」


 「次の日は二日酔いで死んでましたが、二日後には復活していましたよ」


 近くで会話を聞いていた私。


 死ぬほどの二日酔いになるくらい飲んだ夜。


 やはりあのキスも……、酔った上での座興……。


 「こんばんわ……」


 荷物を置きに、私の座っていた方に近付いてきたので。


 必然と挨拶をする。


 「こんばんわ」


 端正な顔が、私に微笑みをくれる。


 これは今まで通りの、ありふれた風景。


 「そうだ、FC北海道。また勝ったね。最近絶好調」


 「外国人ストライカーもいいですが、やはり高橋さんイチオシの中澤のワントップのほうが、勝率高いですよね」


 これもありふれた二人の会話。


 ただあの夜の「冴香さん」という呼び方が、これまで通りの「高橋さん」に戻っているだけ……。
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